読書

ホワイトラビット|とびはねるプロット

いつも他の作家とは違った語り口で読者を楽しませるのが伊坂幸太郎だけれど、今回はいつも以上のぶっ飛びよう。 神さまのような視点から「次にはこういうことが起こります」「そのころこちらではこういうことが……」と地の文で説明してしまう(『レ・ミゼラブ…

隷属なき道|閉塞感を打ち破るためのシステムは?

サブタイトルからして「人工知能で人間の仕事の半分がなくなるから、ベーシックインカムで対応しましょ」って話かと思ったら、もっと広く不可避でどうしようもない話。そもそもAIなんてきっかけのひとつに過ぎず、格差や停滞で今の社会制度は限界だから、ベ…

東芝の悲劇|どこにでもある日本企業の話

東芝、タカタ、日産、神戸製鋼。 名だたる日本の企業の不祥事が続く中、曲がりなりにも日本企業に勤めている身として、組織が崩壊に向かうとき、その内部で何が起きているのか知っておきたかったので。 読んでみると、別に東芝特有の話ではなくて、大半の日…

ベストセラーコード|アルゴリズムかく語りき

物語で人は動く。 適切な物語さえ与えれば、自己犠牲を厭わない英雄的な行動も、ホロコーストのような残虐な行為も、人間にはできてしまう。それほどに物語の力は強力なのだ。 その昔、何かを物語ることは神さまだけの特権だった。人間は神さまが語る物語を…

ユリゴコロ|生まれの性質は変えられないのか

「家族が殺人犯だったら?」というテーマで始まるミステリー。 主人公の実家から「ユリゴコロ」と題された4冊のノートが見つかる。そこに書かれていたのは殺人に取り憑かれた人間の生々しい告白文。自分の家族に殺人者がいたのか? 主人公は真相を探る——。 …

AX|同じだけど違うものを

『グラスホッパー』『マリアビートル』から続く、伊坂幸太郎の「殺し屋」小説第3弾。今回は恐妻家の兜が主人公。 ハリウッドの脚本市場でいうところの「同じだけど違うものをくれ」という要望に応えるような作品。 AX アックス (角川書店単行本)作者: 伊坂…

反脆弱性|現代は効率的すぎて脆弱だ

働き始めて驚いたのは、予定どおりに終わる仕事やプロジェクトがほとんどないこと(もちろん自分の担当分も含めて)。 効率的と呼ばれる方法を試し、生産性を向上させるという触れ込みのツールを導入し、マンパワーを得るために外注までしている。 それなの…

<インターネット>の次に来るもの|インターネットは人間の本能を刺激した

今でこそ当たり前になったパソコンやインターネットだけれど、ほんの20年前までは「わけのわからない」ものだった(バフェットも「理解できない企業には投資をしない」と言って最近までIT企業に手を出さなかったくらいだし)。 インターネットやITなんていう…

職業としての小説家

職業としての小説家 (新潮文庫) 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/09/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (12件) を見る 村上春樹の自伝的エッセイ。

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」

田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」 タルマーリー発、新しい働き方と暮らし (講談社+α文庫) 作者: 渡邉格 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2017/03/17 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 岡山駅から二時間の田舎にある、天然菌を使って発酵させた…

チェルノブイリの祈り

チェルノブイリの祈り――未来の物語 (岩波現代文庫) 作者: スベトラーナ・アレクシエービッチ,松本妙子 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2011/06/16 メディア: 文庫 購入: 7人 クリック: 57回 この商品を含むブログ (20件) を見る チェルノブイリ原発事故…

イーロン・マスク 未来を創る男

イーロン・マスク 未来を創る男 作者: アシュリー・バンス 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2015/09/18 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (1件) を見る 『アイアンマン』のトニー・スタークのモデルと言われるほどの、フィクションの世界から飛び出…

AIは「心」を持てるのか

AIは「心」を持てるのか 脳に近いアーキテクチャ 作者: ジョージザルカダキス 出版社/メーカー: 日経BP社 発売日: 2015/09/16 メディア: Kindle版 この商品を含むブログを見る AlphaGoが人間に勝利をおさめたことが象徴するように、人工知能は人間の学習方法…

意識はいつ生まれるのか

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論 作者: ジュリオ・トノーニ,マルチェッロ・マッスィミーニ,花本知子 出版社/メーカー: 亜紀書房 発売日: 2015/05/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (14件) を見る 科学に残された数少ないフロンテ…

データの見えざる手

データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則 作者: 矢野和男 出版社/メーカー: 草思社 発売日: 2014/07/17 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (24件) を見る 気体分子の1つひとつはランダムに動き、予測することは不可能で…

天盆

天盆 (中公文庫) 作者: 王城夕紀 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2017/07/21 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 「天盆」という将棋のような盤戯によって政治の行く末が決まる国が舞台。平民として生まれた凡天は類い稀な天盆の才を発揮す…

ウォール街の物理学者

ウォール街の物理学者 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 作者: ジェイムズ・オーウェン・ウェザーオール,高橋璃子 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2015/06/04 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (1件) を見る 勘と人脈の金融界に数式で挑んだ物理学…

マレ・サカチのたったひとつの贈物

マレ・サカチのたったひとつの贈物 (中公文庫) 作者: 王城夕紀 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2018/03/23 メディア: 文庫 この商品を含むブログを見る 作者は『伊藤計劃トリビュート』で知った王城夕紀。 後進国が発展し経済格差がなくなり、格差を…

破壊する創造者

破壊する創造者――ウイルスがヒトを進化させた (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)作者: フランクライアン,,夏目大出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2014/12/15メディア: 文庫この商品を含むブログ (2件) を見る 帯を見るかぎり、2015年本屋大賞の『鹿の王』…

何者

『桐島、部活やめるってよ』の朝井リョウ。 いつも通りに若者のモヤモヤした感情をきれいな言葉でまとめあげていくのかと思いきや、就活を舞台にしたとんでもないホラー小説だった。 誰もが正しくて、誰もが間違っている。 そのどうしようもなさが心地いい。

リカーシブル | 大人の都合に振り回される青春ミステリ

リカーシブル (新潮文庫)作者: 米澤穂信出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2015/06/26メディア: 文庫この商品を含むブログ (9件) を見る あらすじ 父の失踪により母親の故郷の地方都市に越してきた少女・越野ハルカは、 地方の閉塞感と、その土地に残る未来視…

ブリリアンス

世界の総人口の1%が特殊能力を持つ “超能者” として生まれる。一般人と違う彼らの一部は成長してテロリストになる……というX-MENのような設定のサスペンス。 とはいっても、超能者たちの能力は目からビームを出したり、どんな怪我でも治ってしまうような荒唐…

24人のビリー・ミリガン

24人のビリー・ミリガン〔新版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)作者: ダニエル・キイス,堀内静子出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/05/08メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る 24人のビリー・ミリガン〔新版〕 下 (ハヤカワ・ノン…