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データの見えざる手

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気体分子の1つひとつはランダムに動き、予測することは不可能である。しかし膨大な数の気体分子からなる集団ならば統計的に動きを予測できる。
それと同じように、1人ひとり異なる人間個人の行動を統計的に計算することはできなくとも、膨大な数からなる人間集団の動きならば統計的に予測できるはずである。
そう考えたのはロボット三原則でお馴染みのアシモフだけれど、どうやら1人の人間でも統計に従って行動するものらしい。 

人間を動かす法則

日立製作所に勤務する現役研究者である著者は、リストバンド型のウェアラブルセンサを開発した。それを被験者に装着してもらい、被験者の動きをリアルタイムで測定する。すると、1分間あたりの腕の動きが激しい時間帯(例えばプレゼン発表中)と穏やかな時間帯(例えばデスクワーク中)が現れる。
測定期間中、被験者が激しい動きから穏やかな動きまで、どれだけの時間おこなったかをプロットすると、穏やかな動きほど時間が長く、激しい動きほど時間が短いことがわかった。ここまでは予想できる。
興味深いのは、どの被験者の行動もある分布に従っていたことだ。著者はその分布をU分布と呼んでいる。
これは普段の行動が、何かしらの法則に従っていることを示している。
穏やかな動きと激しい動きの比率は決定されている(個人差はあるらしいけれど)。激しい動きをし続けることはできないし、かといって穏やかな動きを続けることもできない。デスクワークに疲れたとき、身体を動かすと良いというけれど、その理由もここからわかるかもしれない。

人工知能とのコラボ

人の行動が統計的な分布に従うことが示されたというだけでもおもしろいのに、ウェアラブルセンサと人工知能を組み合わせた実験も紹介されている。
ターゲットは小売店で、ウェアラブルセンサで店員と客の動きのデータを取り、人工知能に解析させる。人間にも解析をさせ、人工知能と人間の間で効果を競わせた。結果、人工知能の提案は、人間の提案を上回る売り上げを上げた。
おもしろいことに人工知能の提案がなぜ優れていたのか、結果を見た後でも人間には理解できなかった。著者はそれが機械的にデータを処理する人工知能の強みだという。著者曰く、人間がデータを処理すると結局、人間が理解できる「ありきたりな」解答しかできないのだそう(データサイエンティスト……)。それでは限界がある。人間と人工知能の組み合わせによって限界を突破することができる。

まとめ

人間の社会性はこれまでなかなか定量できなかったけど、ウェアラブルセンサを使えばできそう。そんな気にさせてくれる本。
動きを計測して、集中力を保つことのできる最適な作業スケジュールを組んでくれるアプリがアップルウォッチあたりにあれば嬉しいなあ。