物語の地図

物語の中には、まったく新しい世界が広がっている

24人のビリー・ミリガン

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1977年、オハイオ州で逮捕された青年が24もの人格を持っていたという事件を扱ったノンフィクション。昔、世界仰天ニュースでこの事件をやっていて、本で詳しく読みたいと思っていた。
けれど、なかなか手に取る機会はなく、今回、新装版になっていたので数年越しに購入。ディカプリオ主演で映画化するらしい。『シャッターアイランド』に『インセプション』、精神がテーマの映画が好きなのか。

ビリー・ミリガンの話を知る前は多重人格者といっても、性格の振り幅が普通の人より大きいだけだと思っていた。正常な人でも状況によって怒りっぽくなったり、涙もろくなったりする。ジキルとハイドのみたいに外見や能力まで変化するのは物語の中だけの話だろうと思っていた。
ところが現実は物語のほうに近かった。ビリー・ミリガンの人格はそれぞれが独立していて、年齢や外見、能力や操る言語まで異なる。

22歳のイギリス人、アーサーは合理的で感情の起伏がなく、イギリス訛りで話し、アメリカで運転することを嫌う。イギリスは右側通行だから、イギリス人のアーサーはアメリカの左側通行に慣れていないのだ。

23歳のユーゴスラビア人、レイゲンは激情型の人格でスラヴ訛りの英語とセルボ・クロアチア語を話す。アドレナリンの流れを自在に操り、途方もない力を発揮する。共産主義者で無心論者で色覚異常

8歳のデイヴィッドは苦痛の管理者。感情移入し、他の人格の苦しみや苦痛を吸収する。暗赤色がかった茶色の髪で青い目を持ち、身体は小さい。
などなど。

これら24の人格はビリーの頭の中にある部屋で生活している。暗い部屋の中にスポットライトのように差し込む光の中に入った人格がビリーの身体の操作を担当する。彼らはこの光をスポットと呼んでいる。
24の人格のうち、スポットに出ることが許されているのは10人。残りの人格は犯罪やビリーの身体を危険にさらしたなどの理由でスポットに出ることを許されていない。

人格によって能力が違うのは、担当している脳の領域が違うからだろうと推測はできる。でも、なぜ旅をしたことのないビリーがセルボ・クロアチア語を読み、書き、話せるのだろう?
なぜビリーの脳は人格の単純なONとOFFではなく、頭の中に部屋を造って、そこに24の人格を住まわせるというエネルギーを使いそうなことをしているのだろう?
スポットに出ることができるのが10の人格に限定されているのは、罪を犯したこと以外に理由はあるのだろうか? ビリーの幽閉された14の人格は、自由な10の人格とキャラが被っているような気がする。心理学のエニアグラムは人の性格を9つにしか分類していない。そして、映画や小説で、キャラとして成立する登場人物の数はたいてい10人以下だ。脳が処理できる人格の数は10が限界なのかもしれない。だとすると、ビリーの脳も24の人格を管理することがめんどくさくなって、何かに理由をつけて自由な人格の数を10に限定しているのかもしれない。

そんなふうに人間の脳の不思議を感じることができる作品。