- 作者: 米澤穂信
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/06/26
- メディア: 文庫
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あらすじ
父の失踪により母親の故郷の地方都市に越してきた少女・越野ハルカは、 地方の閉塞感と、その土地に残る未来視にまつわる伝承と、大人たちの矛盾に振り回される。
読んだきっかけ
作者は『氷菓』の米澤穂信。古典部シリーズは未読・未視聴だけど、この作者の本はいくつか読んでいて、中でもブラックな青春小説『ボトルネック』はお気に入り。『リカーシブル』はそれと同じ系統だと聞いていたので、期待を抱いて購入。
小説のテーマ
p22にあるように、この小説のテーマは「大人に振り回される子供」。
「たいへんね。あたしたち子供はいつでも、大人の都合に振りまわされるのよ」
一言あたり百円で安売りされていそうな言葉のあとで、リンカが一瞬「冗談よ」というようににやりとした。つられて、つい吹き出してしまう。
「その通りね。だけどわたしたちはそれでも、それぞれ強く生きていかなくちゃいけないのよ」
八十八円ぐらいの台詞をお返しすると、耐えきれないというようにリンカも笑う。 p22
だから主人公の越野ハルカが置かれた状況は、「大人に振り回される子供の代表」と言ってもいいほど不遇だ。
1. 実の父親が再婚し、ハルカに母親と弟ができる。
2. 父親が会社の金を使い込み、家族を残したまま失踪する。
3. 中1の春、ハルカは母と弟とともに地方都市に越してくる
越してきた街には未来を見通せる娘・タマナヒメの伝承があった。街は過疎化が進み、住人たちは起死回生の一手として高速道路の誘致運動を妄信的に行っており、不穏な空気が流れている。
父親の失踪、継母との距離感、転校先の学校での人間関係、不穏な土地。ハルカは大人の都合で色々な問題を抱え込む。
(回収しきれないほどの)怪しい雰囲気
この小説、街とかそこにいる人の怪しい雰囲気を伝えるのはすごくうまい。けれど、その怪しさをホラーとして受け取ればいいのか、ミステリーのトリックとしてとらえればいいのか、最後まで読み手にはわからないから何だかなという感じ。
『ボトルネック』は最初からパラレルワールドだとわかっていたから、あんな終わり方でも納得ができた。でも、『リカーシブル』は未来を見通すタマナヒメがホンモノなのかニセモノなのか、最後までわからない。
広げた風呂敷をたたまない結末を狙ったのかもしれないけれど、自分には合わなかった。だから、自分の中で『リカーシブル』が『ボトルネック』を超えることはない。
気に入っているところ
とはいえ、そのときのハルカの気持ちがわかるくらいに描かれた「大人の矛盾」は気に入っている。
マナーはしきたりに厳格で、外食や食事中のテレビでさえも許さなかった父親が、結局、会社の金を使い込んで失踪したり。
失踪した父親から離婚届が届いた途端、もう責任はないというふうに晴れ晴れとした笑顔を継子のハルカに向ける母親とか。
腹が立つけど、よくよく考えてみたら大人だって人間だ。子供から見たら何でも知ってて何でもできて守ってくれる神様みたいな存在だけれど、清廉潔白であるはずがない。
子供は神様の啓示を疑いもなく吸収して教義にしていくものだけれど、ハルカは「大人の矛盾」に気づいて、それに抗うように行動する。
それが成長だって、この作品は言いたかったのかもしれない。
- 作者: 米澤穂信
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