プロジェクト・ヘイル・メアリー

『火星の人』のアンディ・ウィアーの最新作。
今度の主人公の所在地は火星よりもはるかに遠いくじら座の恒星系。
地球では太陽の光量が指数関数的に減少するという現象が観測され、氷河期へのカウントダウンが始まっていた。その解決策を探すため、主人公は別の恒星系へと放り出されたのである(アメフトの試合終盤の神頼みパスをヘイル・メアリー・パスというとのこと)。

太陽が元気をなくす理由であったり、人類が恒星間飛行を成し遂げるテクノロジーであったり、主人公が直面する課題であったり対策であったりへの科学的「屁理屈」は、火星に取り残された人間が生還するというフィクションをそれらしくみせた『火星の人』と同様に読んでいて楽しい。
『火星の人』と違うのはバディものであるということ。アンモニアの匂いを漂わせたクモ型の重金属異星生物なんて、邪悪な敵としての要素しかないのに、主人公とのコミュニケーションの様子を見ているうちに愛らしく感じてしまう。しわしわで、ぱっと見気持ちが悪いE.T.に対して次第に愛着を持っていくような感じ。

ライアン・ゴズリング主演で映画化進行中とのことなので、公開されるのが楽しみ。アクションの要素が薄かった『火星の人』に比べて、ダイナミックに状況が変わるから、『オデッセイ』よりも無理なく映画にできそう。