静かなる海


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気候変動で水不足に陥る地球。生命の根源たる水は社会的役割に応じた配給制となり、人々は格差社会を強く意識する。
そんな中、韓国では月面探査チームが発足。彼らの行き先は月の静かの海にある、数年前に閉鎖された韓国の基地。放射能漏れを起こしたその基地から、とあるサンプルを持ち帰ることがミッションだが、基地には秘密があり——。

母なる水に恐怖を抱かせる人間マーライオンと、ドラマのレベルを超えている月面基地の描写が見所なのだけれど、それ以上にツッコミどころが多い。

月の水は人類にとって危険なウイルスのようなもの、月の水は人間に感染し、増殖するというのが物語の肝なのだけれど、ドラマの中にある一滴の血液から無尽蔵に水が増えていく描写をみると、質量も体積も無視していて、ウイルスどころか元素変換しているのでは?

月面基地での人体実験の結果生まれた、月の水に耐性を持つ新人類。その新人類を解析して、旧人類も耐性を持てるようになれば、月の水を利用できるようになって、水不足も解決!というのが希望として示されるのだけれど、ホントに希望か?
月の水の料にだって限りがあるし、いくら増やせるといってもそのためには餌が必要。餌は植物でも良さそうだけれど、荒廃した地球にそんなものが潤沢にあるとは思えない。となると、月の水に耐性を得た人類と、そうでない人類の間で新しい格差が生まれるのではないか。月の水に耐性のない人類は、水生成装置として犠牲になるディストピアまで想像してしまって、決して希望に見えなかった。
宇宙服なしで月面に立てるような新人類の爪の垢を煎じて飲めば、水さえ不要になるのかもしれないけれど。

ケプラーやガリレオが思った通り、静かの海に本当に水があったというおしゃれな設定に集中して、余計なことは考えてはいけない作品。