世界標準の経営理論 | 理論を取り込み熟成を待つ

世界標準の経営理論

世界標準の経営理論

  • 作者:入山 章栄
  • 発売日: 2019/12/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

はじめに

Amazonで購入し、届いてびっくり800ページ! 辞書くらいの厚さ。

紹介されている経営理論は30という。
読んだところで、自分のような凡庸なビジネスパーソンには即効性はないけれど、著者の言う「思考の軸」みたいなものができて、様々な事象を理解できるようになることを願う。

例:ダイバーシティ

例えば、本の中でも紹介されているダイバーシティの考え方。
今ではピークを過ぎた感じさえするダイバーシティ。
組織の成長のためにはダイバーシティが重要だと教えられるけれど、性別・国籍・年齢などの多様化が、どうして組織の成長に結びつくのか正直わからず、道徳の問題という受け止め方をしていた。
道徳の問題だから、何か違うなと思っていても「ダイバーシティ」を理由に出されたら何も言えなくなってしまう。
それに対してこの本が示す答えはこう。

タスク型の人材多様性(task diversity)とは、知見・能力・経験・価値観などについて、多様な人材が組織に集まることだ。これらの要素は、外見に表れにくい。一方、デモグラフィー型の多様性(demographic diversity)とは、性別、国籍、年齢などの側面で、組織の人材が多様化することだ。こちらは目に見えやすい属性である。 そしてこれまでの経営学の実証研究の総論として、両者が組織パフォーマンスに与える影響は異なる。それは以下のようなものだ。 総論1——タスク型の多様性は組織にプラスの影響を及ぼす。 総論2——デモグラフィー型の多様性は組織にプラスの影響を及ぼさない。それどころか、場合によってはマイナスの影響を及ぼすことがある。 p365

つまり、ぼくの受け止め方は半分は正解で、半分は間違いだったということになる。
性別や国籍や年齢といったわかりやすいダイバーシティを深めたところで、組織としての成長はない。
とはいえ、性別や国籍や年齢が違えば、持っているスキルだって異なるだろうし、それが間接的に組織に良い影響を与える可能性はある。
翻れば、組織の成長が目的と言うのなら、人種や性別といったわかりやすい属性をコレクションしたところで意味はなく、その人材が持つスキルに目を向けよということになる。単純に人を見るときの色眼鏡を外せという話。コレクションに走るのではなく。
だから、「組織の成長のためのダイバーシティ」なんてお題目は、目的と手段をはき違えていると、この本を読んだあとでははっきりと言える。
……いや、面と向かっては言えないかもしれないけど、そんあ腹落ちした考え方をしっかりと持っていられる。

まとめ

最初に言った通り、この本を読んだところで、即効性があるとは思えない。
SMM理論とTMS理論は読後の今ではどっちがどっちか覚えていないし、ゲーム理論はパズルを説くようで楽しいけれど、現実の世界でこれほどわかりやすく問いが提示されることはないだろう。
けれど、それらを読んだ経験は、きっとどこかに残って熟成されて、いつか役にたつものになるはず。
即効性がないからこそ、逆説的に早く読んだほうがいい。

世界標準の経営理論

世界標準の経営理論

  • 作者:入山 章栄
  • 発売日: 2019/12/12
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)