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エクソダス症候群 | 逃げ道だって無限にあるわけじゃない

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久しぶりに伊藤計劃風味のSFを読んだ。
これだけで感想としては十分かもしれない。

エクソダス症候群 (創元SF文庫)

エクソダス症候群 (創元SF文庫)

あらすじ

人類が火星に移住を開始している近未来。主人公は火星にある唯一の精神病院に赴任する。薬もベッドもスタッフも不足した火星では、大昔の癲狂院のように、人権を無視した治療が続けられている。主人公の赴任をきっかけに、隠されていた歯車が動き出す。

感想

題材は精神医学。なかなか小説で取り上げられない題材。
しかも焦点を当てるのはその科学性ではなく、似非科学性という、2回くらい捻った題材の選び方。
精神医学の危うさを取り上げたプレゼンがTEDトークの視聴数の上位に食い込むくらいなので、題材だけでもおもしろいことは確実。

www.ted.com

この小説でいちばん好きなのは文体なのだけれど、うまく説明できないのがもどかしい。伊藤計劃みたいな文体といえば通じるんだろうか。主人公の置かれている状況さえ客観的にドライにリズムよく描写する文体は、皮肉屋な私には相性がいいのだと思う。

住みづらくなった地球から火星に脱出した(エクソダス)移民たち。けれどその移住先の火星でも物資は足りず、生活は楽ではない。地球にも、火星にも見切りをつけた彼らは、次にどこに向かうのか。
その姿は、日々閉塞感に囲まれて生活している現代人の姿にも重なる。
いまの生活が嫌になったとき、あなたに逃げる場所はありますか?
逃げ道を全て使い切ったとき、あなたはどうしますか?

エクソダス症候群 (創元SF文庫)

エクソダス症候群 (創元SF文庫)