21 Lessons | 歴史学者、現代を語る

21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考

21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考

『サピエンス全史』で過去を解き明かし、『ホモ・デウス』で未来を描いた著者が、現代について語る。
上の2つの予習は必須。

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来

ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来


21のテーマに分かれたこの本が、変化に富む現代に生きるわたしたちに伝えたいことは1つ。
AIやバイオテクノロジーによって、これからますます変化のスピードは増していく。その奔流の中で溺れたくなければ、世界を理解し、自分の考えを持て。
パニックになってはいけない。

パニックは傲慢の一形態だ。それは、私はいったい世界がどこへ向かっているか承知している(下へと向かっているのだ)という、うぬぼれた感覚に由来する。当惑はもっと謙虚で、したがって、もっと先見の明がある。「この世の終わりがやって来る!」と叫びながら通りを駆けて行きたくなったら、こう自分に言い聞かせてみてほしい。「いや、そうではない。本当は、この世で何が起こっているのか、どうしても理解できないのだ」と。 p37


多岐にわたるテーマの中で、特に面白かったのは独裁主義と民主主義についての考察。
独裁主義のように、権力と情報を一ヶ所に集中されても、20世紀の技術では、十分な速度で情報を処理し、決断を下すことはできなかった。だったら、多少効率が悪くても、情報と権力を分散させる民主主義の方が効率が良い。だから、アメリカがソ連に勝った。
けれどこれからはAIがある。情報と権力の一極集中はAIと親和性が高い。
民主主義が理想とする権力の分散が、GoogleやAmazonといったプラットフォーマーたちの足かせになっていることを考えると、社会システムとしては中国が一歩先を行っているかもしれない。
中国はテクノロジーそれ自体ではアメリカの後を追いかけるだけかもしれないが、AIと社会システムの親和性によってアメリカを追い越すかもしれない。


AIによって今日の教育システムが役立たなくなるとも言っている。

教師が生徒にさらに情報を与えることほど無用な行為はない。生徒はすでに、とんでもないほどの情報を持っているからだ。人々が必要としているのは、情報ではなく、情報の意味を理解したり、重要なものとそうでないものを見分けたりする能力、そして何より、大量の情報の断片を結びつけて、世の中の状況を幅広く捉える能力だ。 p338

これって、ジョブズ が言っていた「点と点をつなげる」という話に似ていません?

ペーパーバック版 スティーブ・ジョブズ 1

ペーパーバック版 スティーブ・ジョブズ 1


本書の最終章では、著者自身のことにも触れている。
それによれば、まるで悟りを開いているかのような著者の思考の冴えは、毎日2時間の瞑想から生まれているとのこと。
マネをしてみたいが、2時間はちょっと……

21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考

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