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物語の中には、まったく新しい世界が広がっている

新・生産性立国論 | 途上国日本へ

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内容

人口減少によって、今までの常識はすべて覆されます。人口激増が可能にした寛容な社会も、曖昧な制度も、日本的資本主義も、すべて根底から崩れ去ります。経済の常識も、企業と労働者の関係も、政治のあり方も、これまでとはまったく異なるものになるでしょう。 p2

デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論

デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論

感想

この人の本を読むのは、『新・所得倍増論』以来2回目。

物語には、いい人に見えて実は悪人だったというパターンがつきもので、その意外性がおもしろい。この人の本のおもしろさも似たようなところにある。

『新・所得倍増論』で日本の素晴らしさを表す「技術大国・日本」というフレーズに対して、「バブルまでの経済成長があったのは人口増加が主な理由。今の中国と同じ。技術力があるかどうかはわからないけれど、技術力という言葉に甘えてきたせいで、日本の生産性は先進国最下位まで下がっている」と言った彼は、この『新・生産性立国論』では日本が誇る「高品質・低価格」というフレーズをやり玉にあげている。
本当に高品質ならば、高く売れるはずだし、なんでイノベーションも起こしていないのに、低価格の製品を作れるの? 労働者の賃金を削っているだけでしょう? そんな方法でモノを作って虚勢を張ったところで、未来につながらない。
本から伝わってくるのは、日本のリーダー層に対する著者の怒りと苛立ち。リーダーの思い込みだけで組織が動き、臭い結果が出れば蓋をする。

無能な経営者にとって、日本はこれ以上ない天国のような国です。
(中略)日本にはマスコミを中心に、実態がどんなに悪くてもそれを無視して、無条件に全面肯定する傾向があります。生産性が低いのは事実なのに、高品質・低価格やデフレなどの屁理屈を並べて、事実を隠し立てようとする。さらには、本当に実態が悪くても、「それは一面そう見えるだけで、別な見方をすればよい」「日本型資本主義だから」とごまかす論調も少なくありません。
要するに、理屈にもならない言葉で適当にごまかせば許されてしまうので、改革をする方向につながらないのです。 p197

人口減少時代を迎えた日本で、さかんに口にされる人工知能や自動化による効率化にも警鐘を鳴らす。

日本経済の問題は供給だけではありません。むしろ、需要が減ることのほうがより深刻です。 ロボットは食事もしなければ車も買いませんし、もちろん旅行もしません。エネルギー源となる電気以外、何かを需要することはないので、需要不足の問題は解決できません。 P224

そもそも日本はIT革命にさえ乗り切れていないのだし。

ITの恩恵を享受できなかった日本が、ロボットなどの技術を効果的に使えるのか、疑問を覚えても当然でしょう。 p225

著者は本の中で日本の生産性や経営者の質が「途上国」といってもいいレベルだという。これはもちろん「先進国・日本」という言葉に対する「発展途上国・日本」という意味なのだろうけれど、これから人口が減り続けることを考えたら、もっと先行きがない「衰退途上国」といった意味合いで捉えたほうが正しそう。

「だってさ、日本ってもう研究とか学問をする国じゃないでしょ?」

www.from-estonia-with-love.net

こんな記事がTwitterで回ってきたけれど、それを言ったらこの国は、ビジネスをする国でもない。
だったら何をもって世界と戦えばいいのかと。
人口増加を基盤にして成り立っていた寛容な社会も、曖昧な制度も、日本的資本主義も、今やきしみをあげている。経済の常識も、企業と労働者の関係も、政治のあり方も、全てを変えていかないと、この国は衰退していく一方なのかもしれない。

デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論

デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論