物語の地図

物語の中には、まったく新しい世界が広がっている

メタルギアソリッドV:ファントムペイン

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発売から1週間、やっとクリアした。28年に渡るメタルギアシリーズの最終章として、自前のゲームエンジンまで開発するというこだわりようで作られた小島秀夫監督の最新作。それがおもしろくならないはずがないと思っていたけれど、そんな期待は思っても見ない方法で砕かれることになったのでした。だってこれ、未完成なんだよ……。続編ありきではなく未完成……。

ゲーム性だけみたら文句なしにおもしろい。シリーズ初のオープンワールドで潜入ルートは格段に増えてるし、武器の開発に兵士や動物の回収といったコレクション・育成要素を嫌いな人はいないはず。
でも、ゲーム性だけなんだ……。ゲームっていう箱の中にあるべきストーリーがしっちゃかめっちゃかで、その上、部品も足りなくて、意味不明……。そりゃどんなストーリーテラーにだってハズレはあるけれど、これはそういう「失敗」の類じゃない。これはダメだとわかっていながら、何かの理由で突貫工事で組み上げたって感触が伝わってくる、すごく悲しい類のものだ……。最後のミッションなんか、チュートリアルのコピーだし……(演出上はアリだけど、普通はチュートリアルの表示を消すはずだ)。

ストーリーがおかしいと、いちばん実感しやすいのはスペシャルエディションに幻のエピソードとして収録された『蝿の王国』の存在だ。30%の出来でもムービーが作られていて、英語版の俳優であるキーファー・サザーランドたちの声も当てられている。このことから、このエピソードが単なる構想ではなくて、最後まで組込もうとしていたものだと予想できる。そのエピソードの中でようやく、ゲームの中ではまったく活かされることのなかったスネークの色覚異常やリキッド少年の存在が意味を持つことになるということが、どれだけこのエピソードが重要であるかを物語っている。そんな重要なエピソードを幻としてしまわなければならない理由というのはよほどのものだ。
重要なエピソードを一つ省いただけではなく、たぶん、ゲームに収録されたエピソードも順序を変えたりしているんではないかと思う。このゲームでは第1章の終わり(!?)でかなりキャラの立った、1章で殺すには惜しい悪役が死ぬ。で、2章に入ると悪役が仕掛けたバイオ兵器が発動して、仲間が何人も死んでいく。そして生き残った仲間が「復讐だ!」と叫ぶ。……誰に復讐するんだろう? 悪の根源はすでに死んでいるのに。たぶんこのエピソードは第1章の途中に入れるつもりだったんだ。そう考えるとしっくりくる。

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そんな推測の成否を確かめるべく調べてみると、去年の段階でリークされたエピソードの構成が見つかったので、製品版と比べてみた。赤字がリーク情報に入っていて、かつ、製品版にも入っていたもの。こうして見ると当初予定の半分以上のエピソードが削られていることがわかる。
リークの第1章のほとんどは製品版でも実現できているけれど、第2章以降はスカスカだ。リークの第4章のエピソードが製品版の第1章に来たりしている(そして製品版ではここで3度あるEDのうちの1度めが流れる)。想像するに、製作途中で時間が足りなくなる何らかの事件が起きて、これだけあればなんとか話はつながるというメインストリームのエピソードを完成させて製品版の第1章に詰め込んだ。第2章で、メインとあまり関わらないサブの伏線を回収していこうとして、タイムアップになってしまったという感じではないだろうか。もともとあった流れをバラバラにして突貫工事で仕上げたせいで、どこか歪で、キャラの掘り下げもイマイチなストーリーになってしまったんだろう。

海外勢に押されがちな和ゲーの最後の砦とまで言われた超大作が、どうしてこうも残念な出来になってしまったか。理由として言われているのが、コナミ小島監督の確執だ。収益性の高いスマートフォン向けのゲームに注力したいコナミと、ウン十億かけてでも最高のゲームを作りたい小島監督の理想が折り合わなくなった。それが理由でコジマプロダクションは解散し、最高のゲームを作ることができなくなった。

MGSからはじめて、伊藤計劃やウンチク雑談実況プレイの助けもあって、ストーリーにハマった人間としては、今作がこんな形になってしまってすごく寂しい。 プロローグの病院や言語の工場の気持ち悪さ、感染症に侵された仲間の処理をプレーヤーに任せるところとか、印象的なシーンはいくつかあったのに……。1984とか、神々の沈黙とか、白鯨とか、チョムスキーとか、ネタ追いも楽しかっただろうに……。
コナミ小島監督の関係もあって、(小島監督による)続編もDLCもないみたいだし。来月あたりに出るというノベライズに期待するしかないか……。