『パラサイト 半地下の家族』とアカデミー賞作品賞を争い惜しくも逃す。
アカデミー賞受賞直後に日本公開ともなれば、最高の出だしだったのに。
とはいえ、撮影賞と視覚効果賞を受賞した「全編ワンカット」は凄まじい。
一方で、「全編ワンカット」が仇になっている感も否めない。
最前線の仲間へと伝令を届けるため、戦場を駆け抜ける。
『バードマン』のような街中のワンカット映画にはないスケール感がこの映画のウリなのだけれど、その「戦場」に箱庭じみたものをどうも感じてしまう。
歩いて30分のところにドキリとするシーンがあって、さらに30分行くと感情を揺さぶられるイベントがあって——。
それは広大なエリアに放り出されたプレーヤーが途中で飽きてしまわないように、クエストが周到に用意されたオープンワールドゲームのような肌触り。
北米を縦断する『デス・ストランディング』で、アメリカがゲームサイズに縮小されデフォルメされていたように、この「戦場」も映画サイズに縮小され、デフォルメされている。
「全編ワンカット」を実現するための編集点の作り方もゲーム的。一度登場人物を画面から外すためにカメラが彼らを追い越したり、足下を映したり——。
『メタルギアソリッドV』のプレイアブルシーンからムービーシーンへのシームレスな移行のようなイメージ(映画好きの小島監督のことだから、もともとは映画の技法なのだろうか?)。
これがどうにも私の中のオープンワールド・ゲーム感を加速させる。
個人的な感想を総括すると、これはゲームのような映画である。
全編ワンカットだからといって、現実に近づいているわけではなく、全編ワンカットにこだわったが故に、ストーリーや設定に違和感のあるところが多少ある。
一方で、ゲームのように楽しい映画である。
どこを編集点としているか、どうやって撮影しているか、想像して観ると楽しい。
アカデミー賞で撮影賞と視覚効果賞は獲得したが、作品賞は『パラサイト』に譲った理由はそこにあるのだろう。