- 出版社/メーカー: NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
- 発売日: 2016/10/05
- メディア: Blu-ray
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ジュラシック・パークと同じく(ダブルミーニング)おもしろい
小話
高校生のときの話だ。担任の先生と二人きりで話をした。先生はとても気軽な様子で、僕に訊ねた。
「将来、何になりたい?」
それまで何十人という生徒の進路相談をしてきた担任にとって、それはとても気軽な質問だろうが、当事者にとっては非常に難しい質問だ。勉強を何事かを為すための道具ではなく、いまやっておけば後で楽ができるくらいのものにしか思ってなかった僕にとっては特に。
思えば、幼稚園の頃はよくもまあ、宇宙飛行士だとか仮面ライダーとか、恥ずかしげもなく言えたものだ。無限大の可能性というやつだろうか。幼稚園を卒業して10年近く経ち高校生になった僕は、仮面ライダーがフィクションだと知っているくらいには賢くなっていたけれど、将来の自分の姿を描けるほど賢くはなく、「将来、何になりたいか」という単純で漠然とした問いへの答えに困った。とはいえ、黙っていては進路相談にならないから、とっさに、
「考古学者」
と答えたことを覚えている。苦しまぎれの発言に、担任は律儀にうなずいて、
「考古学者にどんなイメージを持っている?」
と聞いてきた。
「砂漠の真ん中で、恐竜の骨を探すためにブラシを使っているイメージ」
と僕は答えた。そこで担任はぷっと吹き出した。映画好きだと言っていた担任は、僕が何をイメージしていたのかわかったのだと思う。
イメージしていたのはジュラシックパークのオープニング。恐竜の化石をブラシを使って土の中から掘り出すシーン。
前置きが長くなってしまったけれど、いたいけな高校生の進路選択に影響してしまうほどに、『ジュラシック・パーク』は印象的な映画だったという話。それだけ偉大な映画の続編を作るのは、スピルバーグと言えど難しい。実際、『ロスト・ワールド』(2作目)も『ジュラシック・パーク3』も評判がいいとは言えないし。でも、今回の『ジュラシック・ワールド』は違う! 初代の『ジュラシック・パーク』くらいおもしろい!
※以下ネタバレ注意
感想
『ジュラシック・ワールド』は『ジュラシック・パーク』の続編である。その宣伝文句を鵜呑みにして、この映画が前作(ここでは、ロスト・ワールドとジュラシック・パーク3は置いておいて、ジュラシック・パークを指すことにする)以上の新しい何かを提示してくれるのではないかと期待して映画館に行くと肩透かしをくらう。
『ジュラシック・パーク』の事件から22年後を舞台にしてはいるけれど、そこで起きる事件は、映画館から出て冷静になってから考えてみると、22年前の事件とほとんど変わらない。
進化した映像って触れ込みだったけれど、正直、『ジュラシック・パーク』との違いはあまり感じない。だって、恐竜と人間が本当に同じ空間にいるような完成された現実感が前作の時点であったから。
だったらなんで面白いのかって話になるし、書いてて自分も不安になってきたけれど、観てみればきっちりおもしろいんだって!
前作と同じデザインのテーマパークの門が開いて、あのメインテーマが流れれば懐かしさとともに背筋がゾクゾクするし、今回初登場のモササウルスにジョーズのホオジロザメを喰わせるユーモアがあるし、アクションシーンに混ぜたギャグが清涼剤として効いてるしで、エンターテイメントとして申し分がないんだよ!
おまけに前作から20年以上期間が空いているから、親子で観ても楽しめるんだよ! 隣に座った親子連れなんて、同じ部分で泣いて笑って驚いてたよ。内容が20年前の作品とほとんど変かわってないから、逆に言えば前作を知らない子供でも楽しめるんだよ!
前作との違い
「ジュラシック・パークは前作と同じで(ダブルミーニング)おもしろい!」
というメッセージは伝えられたと思うので、上で切り上げても良いかと思ったけれど、
「何も違いがねえのかよ!」
とツッコミが入りそうなので細かい違いをとりとめもなく書いていく。
※さらにネタバレ注意
前作のテーマというか、仄暗い部分は「科学技術」が背負っていた。「人間は神の真似事をしたがり、創造すべきでなかったものを作ってしまった」というセリフが印象的だ。ジュラシック・パークを建設した白ひげのおじいさん、ジョン・ハモンドは恐竜を蘇らせたいという純粋な信念のもとに動いていた。彼には莫大な資金があったから、ビジネスのことをほとんど考えていなかった。結果、ジュラシック・パークの悲劇は、科学技術の暴走が起こしたという側面が強くなる。
一方で、今作のジュラシック・ワールドの創設者サイモン・マスラニはパークをビジネスとして考えている。だからどこかのテーマパークよろしく、3年ごとに新しいアトラクション(恐竜)を作れと科学者たちに要求し、しまいには遺伝子操作をして、恐竜の体を大きく、歯を増やし、観客を楽しませろと言う。それが今作の悲劇に繋がる。純粋な信念だけでなく、ビジネスがパークの創設に絡んできたことで、今作では「科学技術が悪いんだ」という感じがだいぶ薄れてきているように思う。
ラストシーンで登場するモササウルスについて。
あそこでモササウルスがイイとこ持っていくのは賛否両論あると思うけど、そこまで持ってく伏線の張り方に唸ったさ。中盤のパニックシーンでベビーシッターがプールまで運ばれるシーンがなかったら、映画の観客の頭にはパークの地理が頭に入っていなくて、ラストで「なぜモササウルスがここに?」ってなっていたと思う。「やけにあっさりとベビーシッターを殺すなぁ」と思って見ていたけれど、プールに放り込まれた時点でベビーシッターはパークの地理を観客の頭に叩き込むっていうナビの役割を全うしていたんだ、きっと。
前作は恐竜vs人間という構図だった。おまけに恐竜の方が主役だったから、続編が作りにくかったのではなかろうか。一方で今作では、恐竜と信頼関係を築ける人間がきちんと主役をしているから、続編が作りやすいと思う。
独立したエンターテイメントとして面白いし、新しく三部作を作りそうな雰囲気なので、映画館で観ておいて損はない映画。
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