概略
世はまさにプラットフォーム時代と言わんばかりに、Google、Amazon、Facebookなどのプラットフォーマーたちのニュースを、テレビで見かけない日はない。
プラットフォームという言葉が当たり前のように交わされている状況だけれど、果たしてその本質を知っている人がどれだけいるのだろうか。
知っている人が少ないからこそ、データを独占する巨大企業という資本主義のビッグブラザーのようなイメージがひとり歩きしているのではないか。
知っている人が少ないからこそ、何か人が自由に発言できる場所を作れば、勝手にネットワーク効果なり、シナジーなり、相乗効果なり、意識の高い効果が生まれて、利益を生み出すというような、能天気なプラットフォームまがいの提案が氾濫しているのではないか。
この本は、そんな勘違いを正すべく、プラットフォームの本質について説明する。
プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか
- 作者: アレックス・モザド,ニコラス・L・ジョンソン,藤原朝子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2018/02/07
- メディア: 単行本
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感想
プラットフォームの本質は、取引コストの低減とネットワーク効果だとこの本は言う。
「規模の利益」というものを教科書で習った覚えがある人も多いと思う。組織の規模が大きくなるほど、効率化するというアレである。だから大企業が有利なのだとその時は習った覚えがあるのだけれど、GEや日立や東芝といったコングロマリッド企業が苦戦しているところを見ると、どうやら違うらしい。
この本によれば、規模の利益が成り立つのは、ある程度の大きさのマーケットや組織であって、それより先は、ステークホルダー間の調整にコストが割かれ(=取引コスト)、利益は減っていく傾向にあるという。
プラットフォームはこの取引コストを極限まで減らすことで、ネットワーク効果を最大限まで高めて、巨大な利益を生み出すのだという。
Googleはウェブの探索と広告の掲載を容易にし、Amazonは商品の検索と配送を簡単にし、ウーバーは運転手と乗客を簡単に結び付けられるようにした。これらプラットフォーマーが築き上げたシステムは、どれだけ参加者が多くなろうとも、同じように動き、取引コストは増大しない。一方で、参加者が増えることでネットワーク効果は増大していくから利益が上がっていくばかりになる。
このあたりが従来の組織とプラットフォームとの決定的な違いとなる。
大きなプラットフォームに参加することが、参加者にとってネットワーク効果を享受する最善の策になるのだから、プラットフォームが勝者総取りの様相を呈するのは必然。
この勝者総取りの部分が、最近の規制の動きにつながっているのだと思うけれど、プラットフォームの独占と、従来の独占企業というのは異なる。
一般に、独占企業が誕生するのは、市場原理が破綻した結果と考えられている。需要と供給の力では、もはやある企業の市場パワーを抑制できなくなり、異常に巨大なシェア獲得が可能になってしまうのだ。しかしこの考え方はネットワークには当てはまらない。ネットワークでは、規模が大きくなり、生み出される価値が増えると、ユーザーにとって効率性と利便性が高まる。プラットフォームの独占企業は、市場原理が破綻した結果ではない。むしろ市場が正しく作用した結果であり、経済学者が「自然独占」と呼ぶ現象だ。 p147
データの独占と悪用は確かに心配するべきことだろうけれど、だからといって共有を始めたらそれはそれでプライバシーの問題に直結するだろう。
データを集めるなというのも、それができる技術があるにも関わらず、後戻りしているようで何か違う。
新しいプラットフォームを構築するプラス面を語る前に、最大のリスクを話しておきたい。それは現行の法令だ。20世紀のほとんどの間は、直線的なビジネスが支配的だったため、多くの法律はこうしたビジネスを規制することを想定して作られており、プラットフォームにはうまく当てはまらなないことが多い。このため、業界初の本格的プラットフォームは、法的なグレーエリアで活動することになる場合が多い。 p296
現在進行形のプラットフォーマーへの批判は、新しい時代の幕開けが生んでいる摩擦なのだろう。
新しい時代を旧時代の制度で縛りつけていては前進できない。どこかに落としどころを見つけることはできるのだろうか。
プラットフォーム革命――経済を支配するビジネスモデルはどう機能し、どう作られるのか
- 作者: アレックス・モザド,ニコラス・L・ジョンソン,藤原朝子
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2018/02/07
- メディア: 単行本
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