『繁栄』のマット・リドレーがイノベーションについて語る。
イノベーションを生むにはどうしたらいいか?
長年繰り返されてきた問いに対して、本書はこう答える。
悩んでいる暇があるなら手を動かせ。
蒸気機関にせよ、飛行機にせよ、何にせよ、世界を変えたイノベーションがなぜ生まれたのか、誰が発明したのかいうのははっきりしない。
ワットやライト兄弟といった有名どころはいるけれど、彼らはそれ以前の先人たちの知恵を集約したに過ぎず、彼らだけで偉業を成し遂げたわけではない。
ましてそれらが大きなお金になるかどうかなんてことは、そのイノベーションに関わったほとんどの人間には二の次で、彼らはひたすらにアイデアを具現化しようとしていただけ。
どうしたらイノベーションが生まれるかなんて問いはナンセンスで、イノベーションのための規則を整えるとか、知財の保護に力を入れるなんてことは本末転倒。
例えば原発では、安全(とされる)規則を守るために、現場の気づきで生まれるはずのボトムアップの改善はできない(してはならない)わけで。規則を守るためにもリソースは必要で、そうなると利益を確保するために根本的な策は打てずに、破滅的な事故につながったり。
例えば特許を保護するために、世界中の企業が莫大な資金をつぎこんでいるわけだけれど、その資金の一部でも「無駄」な行為につぎ込んだら、イノベーションの萌芽につながらないかとか。アイデアがつがうことで新しい技術が生まれると主張するマット・リドレーからすると、今の知的財産保護は行きすぎているように映っているようす。
- イノベーションは結果であって、目的にしてはならない
- 行き過ぎた保護主義は停滞を生む
という2点は大いに共感できるところ。