アーモンド | 猿まねの感情

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アーモンド

アーモンド

2020年本屋大賞 翻訳小説部門 第1位。
扁桃体が人より小さい十六歳の高校生、ユンジェの物語。
扁桃体は感情を司る器官で、アーモンドの形に似ているとか。それが小さいということは自ら感情を抱く能力も、他人の感情を理解する能力も低いことを意味する。

ユンジェの母親は感情がわからない息子に、「喜」「怒」「哀」「楽」「愛」「悪」「欲」を丸暗記させ、コミュニケーションの模範解答を身体にすり込ませようとする。
表情も感情もないユンジェを気味悪がって、周囲の人間は距離をおくのけれど、そんな彼らにしたって、「模範解答」をまねしているだけなのではないだろうか。

生き物をいじめるのは良くないというけれど、本当にいじめられた生き物の痛みを感じている人はどれだけいるのか。教科書的に正しいことを口に出しているだけではないか。

テレビなんかでアイドルがファンの皆さんを「愛しています」なんて言うけれど、ホントに愛しているのだろうか。「愛」という言葉を発することが、ひがまれる心配なく自分の嬉しさを表現するための模範解答なのではないか。

扁桃体の小さなユンジェは感じることができない。共感することもできない。
けれど、普通の大きさのアーモンドを持つ人であっても、本物の感情や共感を抱くことは案外少なくて、ただただ、それまでの人生の中で見てきた模範解答を真似しているだけではないか。
ユンジェはそんな違和感を知っている。

SNSのおかげで、この問題にはこういう態度をというような模範解答を知る機会は増えているけれど、それが真似できるからといってそれが正解とは限らない。
ユンジェのひどく平坦な目線を読んでいると、そんなことを思う。

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