物語の地図

物語の中には、まったく新しい世界が広がっている

失われゆく技術について

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こんな雑記を書くのは、例にもよって本を読む時間も、映画を観る時間もないからなのですが(十年ぶりにやったモンスターハンターが思いのほかおもしろかったので仕方ない)。

最近、新聞などで見かける中小企業の事業継承問題。後継者がいない中小企業の事業主が高齢化して、次々と事業を畳んで行くから、優れた技術が失われていく。
中小企業に限った話のように聞こえるけれど、目立たないだけで大企業にだって当てはまる話だと思っていて(大企業は技術が足りなくなったら外注するという手があるので表面化しにくい)、その終わりの始まりが昨年末から続く大企業の失態なのではないか。
おそらく企業成長の原動力となった団塊の世代が定年でごっそりと抜けていって、技術を知っている人がいなくなってしまっているんだろうなぁと。メーカーに勤めている自分自身、ある人がいなくなったら、それまで当然のようにできていたことができなくなったというシーンは何度も見てきているので。
少し古い話になってしまうけれど、STAP細胞で小保方さんが「特殊な作業があるので私にしか作れないかもしれません」というような趣旨の発言をしたとき、「そんなことあるわけないでしょう」と多くの人が嗤ったけれど、それに近いようなことがゴロゴロと転がっている。
そんなことを思っていたら、先週くらいに東洋経済の記事の中で田園都市線の整備状況について、「技術伝承に課題がある」と東急のお偉い方自身が答えているのを見て、どこもそんな状況なんだなあと納得すると同時に、これから産業界どうなるんだと背筋が寒くなった。

toyokeizai.net

「見て学べ」という格言が息づいているのがこの業界だけれど、そもそも「見て学ぶ」対象がいなくなってきているわけで。
これがコンピュータプログラムとかだったなら、成果物は記述されたものであり、どう動いているのかは作った本人がいなくなっても解読することができる。けれど、悲しいかな、製造業のプロセスは暗黙知の次元が多く残っている。スキルを記述するのが難しいことはわかるけれど、もう少しなんとかならなかったのかと。
失われた20年(今や30年?)に育った自分には想像するしかないけれど、新しい技術を掘り起こし、前線をとにかく広げてきたのが戦後の日本で、その技術を次の世代に残し、維持するという考えはあまりなかったのではないか。

太平洋戦争末期の日本の前線があれほど悲惨な状況になったのは、補給線のことも考えず野坊主に精神論で前線を広げたからだという話がある。 その結果、空では開戦当初に圧倒的な性能を誇った零戦が、末期には作り手も乗り手も失った状態で満足に飛ぶこともできなかっ。
陸では食料も弾薬もない状況で兵士が敵地に攻め込み、敵兵が同情するほどの最期となった戦場がいくつもあった。

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翻って現代。
私たちは前の世代が広げた前線を維持することを求められている。
前の世代よりも少ない人数で。
「働き方改革」というお題目で、働く時間を削減しながら。
長時間働くことがいいかどうかは別として、そうしなければ支えきれないシステムが構築されていることは事実。まずはここを変えないといけない。 まずは補給線を整えるところから。
属人化してしまった技術を、みんな(企業や国の枠を超えて)が使えるようにするだけでも大きく変わると思う。けれど、それができるのは、上の世代がかろうじてまだ残っている今が最後のチャンス。
「巨人の肩の上に立つ」最後のチャンス。あと数年もすれば、巨人はいなくなってしまう。