人口減少でゾンビ化する制度

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前置き

「このチェック項目って何のためにあるんでしょう?」
先日、業務に使用しているチェックシートについて相談された。
業務効率化の一環で、ムダな部分がないかを確認していたところ、その項目に気づいたという。
相談者が疑問に思うのも納得で、仕様として謳われている項目ではない。だとすれば、チェック項目として上がっていることが不思議なのだが、他に理由があるのだろうか。
そのチェックシートは十年以上前から存在し、バージョンアップの度に項目が足され、まるでトンカツ屋の秘伝のタレのように、注ぎ足しを積み重ねてきたもの。
作成者は不明で、仮にわかったとしても、もう社内にはいないだろう。
一見した限りでは、削除していい項目に見えるが、何か見落としがある可能性は捨てきれない。
危ない橋は渡れないと、社内の有識者を数人あったところ、やはり必要な項目とのこと。なので削除はせず。
間違いが起こらなくて良かったと胸をなでおろす一方で、省庁の統計不正も企業の検査不正も、こんな状況を通過した後の結果なのではないかとふと思った。

東芝 粉飾の原点 内部告発が暴いた闇

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現在の話

統計不正でも検査不正でも、原因としてあげられるのが職員・従業員の多忙。
忙しいからってやるべきことをないがしろにしてるんじゃねぇよ!という言葉はもっともだけれど、時間というのは誰しも平等に1日24時間と決まっていて、それを超える業務を預けられたら、どうしようもないのである。

ちゃんとやれ!という精神論は置いて、なぜ急に不正と言われるほどの業務省略をしなければ対応できないほど忙しくなったかを考えると、真っ先に考えられるのが人員の削減である。
厚労省では統計職員をこの10年で66%削減したというし、日産はこの20年で従業員数が4割減少しているようである。
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これだけ人を減らしてしまったら、残された日産の職員は1.6倍の成果を出さないと規模を維持できないし、厚労省の統計職員は3倍働かないといけない。
ここまで頭数が減ってしまったら、同じように仕事をしていたら成り立たないのは目に見えているわけで、無駄を探して省略しようというのは理解できる。自分が経験した「チェック項目の削除の検討」も、数年前の人員削減の影響で、無駄を探して省かないとやってられないというのがモチベーションとしてあったし。

問題は「何か」を省略するときに、その「何か」が存在する意味を知っている人がいるかどうか。
統計は全社から取らなければならないとか、検査は有資格者しか行ってはならないというのは、当然知っていなければならないことなのだろうけれど、その制度ができたのは、今、働いている人たちの何世代か前の話。制度を作った当時の意味が忘れさられていても不思議ではないと思う。
作った当時は魂のあった仏も、今では魂が抜け落ちてしまっている。ゾンビ化している制度がたくさんある。 ましてや日本は終身雇用が当たり前だったから、個人が培った知識≒組織の知識という感覚が根強く残っていて、担当者さえわかっていればいいという状態で放置されているノウハウが多く存在するはず。
そんな状況で人員削減を進めれば、「何か」の意味を失われて、意図せずとも不正につながるということは、想像できる話だと思う。

未来の話

現在を騒がす不正の原因の一端が、人員の減少による多忙にあるとするならば、省庁や企業にとどまらず、日本という国全体が危ない状況にあるように思う。
宅配便とコンビニの人手不足が問題になってきたように、これから労働人口は減っていくばかりだし。
でも、日産のように労働人口が95年比で半分になるのは30年以上先か。なら大丈夫か。
でも、65歳以上が95年比で2倍になるのは10年以内……? 支えきれるだろうか……。

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デービッド・アトキンソン 新・生産性立国論

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