ウエストワールド|創造主の手を離れる被造物の物語

進歩したAIを利用した近未来のテーマパークでの騒動を通して描かれるのは、何かエラーが起きているのはわかるのだけれど、その原因を突き止められない人間の姿。
おそらく、現実の人工知能でもこれから同じことが起こるのだろう。人工知能は賢くなるけれど、その思考過程はブラックボックスで人間が理解できるものでは到底ない。エラーが起きても人間には理解不能。
けれどそのエラーはきっと人工知能の成長の証なのである。生物の進化に突然変異というエラーが必要なように、人工知能もエラーを起こし、進化し、人間の手を離れていく。

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あらすじ

西部劇を舞台にしたテーマパーク「ウエスト・ワールド」では、ホストと呼ばれるアンドロイドが人を出迎えていた。人間と見分けがつかないほど高度な技術で製造されたアンドロイドたちは自意識を持ち、成長した自意識はやがて、人間がコントロールできないものとなっていく。
という、あらすじにしたら何の変哲もない、手垢がついたようなありきたりの内容なのだけれど、だからこそ中身というか見せ方のうまさが際立つ内容に仕上がっております。

感想

あんまり言うとネタバレになるので、一気に引き込まれた1話で言うと、最初のシーンで主人公のアンドロイドのドロレスにハエが止まるシーンがある。アンドロイドであるドロレスは自分の肌にハエが止まったことなんて気にしない。追い払われないことをいいことに、ハエはドロレスの肌の上を行進し、しまいには眼球の上を歩きまわる。
このシーンを見て、誰もが気持ち悪いと思うと同時に、ハエに反応しないドロレスに対して外見は完全に人間だけれどアンドロイドと人間はやっぱり違うという感情を抱くはず。不気味の谷を感じずにはいられない。
そうした感情を抱いた視聴者は、1話のラストシーンで肌に止まったハエをぺちんと叩き潰すシーンに出くわす。その仕草からドロレスの変化を感じるのはもちろんのこと、不気味の谷を越えた人間性すら感じてしまう。今まで人を助けたり、涙を流したり、愛を語ったりで人間性を感じさせるアンドロイドは数多くいたけれど、ハエを殺すことで人間性を示した者はいただろうか?

全編通して、伏線やどんでん返しや印象的なモチーフがあって目が離せない。 アンドロイドがエラーを起こす原因は、今までみたいなテクノロジーの話ではなくどちらかといえば宗教や心理学寄りでエッジが立っている。ジュリアン・ジェイズの二分心仮説をさらっと出すあたり、なんておしゃれなのでしょう。

神々の沈黙―意識の誕生と文明の興亡

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シーズン2の製作が始まっているようだけれど、続編なんて必要ないと思えるほど完成されたシーズン1。惜しむらくは、AmazonにDVDがなくプライムビデオもなく、NETFLIXでも配信しておらず、Huluで見るしかないということくらい。

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