グリフォンズ・ガーデン | 人工知能は胡蝶の夢を見るか?

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あらすじ

東京の大学院で修士課程を終えたぼくは、就職のため、恋人の由美子とともに札幌の街を訪れた。勤務先の知能工学研究所《グリフォンズ・ガーデン》には、存在の公表されていないバイオ・コンピュータIDA-10があった。ぼくはそのコンピュータの中にひとつの世界を構築する——。

グリフォンズ・ガーデン (ハヤカワ文庫JA)

グリフォンズ・ガーデン (ハヤカワ文庫JA)

感想

22年ぶりの長編第2作『未必のマクベス』が(自分の中では)話題になっている早瀬耕のデビュー作。絶版になっていたものが、四半世紀ぶりに文庫化。
「四半世紀ぶり」というだけで衝撃だけれど、その題材が「人工知能」ということで、まるでAIに揺れる現在の状況を狙い撃ちしたかのような復活の仕方。『未必のマクベス』じゃないけれど、この作者の人生にも、台本があるのではなかろうか。

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

舞台が1990年代の、20年以上前に書かれた人工知能についての小説ということで、そこに描かれている技術が古臭くないかというのが、読み始める前は気になっていた。
けれど、心配無用だった。
時代を感じさせるのは、携帯電話がないということと、「第五世代コンピュータ」というワードぐらい。「第五世代コンピュータ」の盛り上がりと終焉について知ったのは『人工知能は人間を超えるか』の中でだったか。

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの (角川EPUB選書)

人工知能が動くIDA-10というバイオ・コンピュータが現在でも主流のノイマン型じゃないというのは、古臭いどころか未来を見通していたような設定。
現行のコンピュータのアーキテクチャでは人間を模倣することは不可能なんじゃないかというのは今でも言われているし(『AIは「心」を持てるのか』)、そもそも人間の脳がコンピュータのようなトップダウン型の動きをせず、相互作用的に動いているということも実証されてきている(『意識はいつ生まれるか』)。
今回の文庫化にあたって修正はいくつかしたのだろうけど、このあたりの設定は全く古びてなくて、むしろ先見の明があるなあと感心する。
『未必のマクベス』を、企業犯罪&恋愛小説である割に、技術の描写がやたら細かいなと思いつつ読んでいたのだけれど、この作品を読んで勝手に納得した。作者がもともと工学方面の人なんだろう。

AIは「心」を持てるのか

AIは「心」を持てるのか

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

意識はいつ生まれるのか――脳の謎に挑む統合情報理論

『未必のマクベス』はシェイクスピアの「マクベス」を通して主人公が自らの人生の筋書きを知り、読者もそれを知っているというメタい構造をしていたけれど、この『グリフォンズ・ガーデン』も負けず劣らずメタな造りになっている。
それはところどころに登場しているのだけれど、いちばんは人工知能の動作の仕組み。
主人公によれば、環境を全てシミュレートすることなんて無理だから、キーワードだけを与えて、その他の情報の補完はAIに任せているという(自分なりのざっくり解釈)。
このアイデアを起点にして、今生きているのが現実なのか、シミュレーションの中なのかと、主人公は頭を悩ますのだけれど、よくよく考えたらこれは、小説や映画の構造への言及だよなあと。
すべてを文章や映像で描写することは不可能だから、製作者は本当に必要な部分だけを抜き取って、読者や観客に提示する。後の部分は観客の解釈に任せる。
その構造について、小説の中の主人公が頭を悩ませるのだから、かなりメタい。

そのメタさ加減が、胡蝶の夢的なラストと相まって心地よい。
なんでこの作品が四半世紀も放っておかれていたのかわからない。
それくらいに良い作品。

グリフォンズ・ガーデン (ハヤカワ文庫JA)

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胡蝶の夢作品

インセプション (字幕版)

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