Detroit : Become Human | プレイヤーを試すチューリングテスト

あらすじ

2038年のデトロイト。人間と同様の外見と知性を備えたアンドロイドは、社会にとって不可欠な存在となっていた。一方で、職を奪われた人々による反アンドロイド感情が高まり、軋轢と緊張が社会には生じていた。そんな中、変異体と呼ばれる奇妙なアンドロイドたちが発見される。彼らはあたかも自分の意志を持つかのように行動し始めたのだった。

【PS4】Detroit: Become Human

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感想

これはゲームではない。プレイヤーが物語の行く末を選択する映画である。
開発会社のクアンティック・ドリームは、そんなコンセプトで『BEYOND: Two Souls』や『HEAVY RAIN −心の軋むとき−』などの独創的な「オープンシナリオ・アドベンチャー」を開拓してきた。
この『Detroit』はその集大成。

映像はいつもどおりにきれいで、特にオープニングは実写かと思うほどのリアルさがある。
直立不動だとアンドロイドにしか見えないけれど、視線の泳ぎや姿勢の揺れがあると、途端に不気味の谷を超えて、人間に見えてきてしまう。ゆらぎがあると人間らしく見えるとは、話には聞いたことがあったけれど、ここまで実感したのは、このゲームでの映像表現が初めてかもしれない。

そして、いつも以上に飛び抜けて良いのがテーマ性。
「共感」というのがいちばんのテーマなのだけれど、「アンドロイド」という道具を使い、ゲームにしかできない表現で「共感」を描いている。

まず、物語の舞台に、デトロイトいう都市を選んだのが秀逸で、最近『デトロイト』という映画があったように(同名だけど都市以外の関連性はナシ)、1960年代のアメリカにおける黒人差別の象徴の地となったのがデトロイト。
一方で、自動車産業で栄えたデトロイトも現在は衰退し、破壊と再生の狭間にいる。
そんな都市が、アンドロイドで再生し、アンドロイド差別の最前線になる。かなり優秀なモチーフだ。

そして、プレーヤーが動かすコナー、カーラ、マーカスという3人のアンドロイドたち。カーラとマーカスが「感情」を獲得することは物語の序盤で半ば決定されているのだけれど、コナーの場合は最終盤までわからない。
コナーは「感情」を獲得するのか、それとも命令を実行するだけの「機械」のままでいるのか。
それまでコナーを操作し、演じてきたプレイヤーの選択の積み重ねによって、その2つの結末のどちらに行くのか決まる。
プレイヤーが任務を従順に遂行すればコナーは機械のまま、任務に迷いを見せれば、コナーに感情が芽生える。
ゲームを通じてプレイヤーは「あなたに感情はありますか?」と問いかけられていたのである。
つまりこのゲームは、プレイヤーに対するチューリングテスト*1なのだ。

この仕掛けは小説にも映画にもできない。「アンドロイド」をプレイヤーが動かす、ゲームという媒体にしかできない物語の語り方だ。
ゲーム好きよりも、小説や映画の物語好きにこそプレイしてもらいたい。
そんなゲームがこの『Detroit : Become Human』なのである。

*1 厳密に言えばチューリングテストは「知的であるかどうか」のテストであるから、「感情を持っているかどうか」というのは別の話。ゲーム中でもこの辺は意識されていて、カムスキーテストという架空のテストが登場する。このあたりのこだわりも、個人的にポイントが高い。

【PS4】Detroit: Become Human

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