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スリー・ビルボード | 人は相反する感情を持つものだから

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あらすじ

アメリカ・ミズーリの田舎町に突然設置された3枚の看板。それは7ヶ月前に娘をレイプされ、殺された母親の痛烈な警察批判だった。3枚の看板をきっかけに田舎町の歯車が動き出す。

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※以下、ネタバレあり

感想

不合理を語る映画である。
物語の終着点は最後まで明かされず、善人もいなければ、悪人もいない。主人公である娘を殺された母親でさえ清廉潔白とは言えない。そんな等身大の人間たちの持つ繋がりや偏見を、ミズーリの田舎町を舞台に描く。
観ていて似ているなと思ったのは、サンドラ・ブロックの『クラッシュ』。ロサンゼルスを舞台に、多民族国家アメリカで暮らす人々に繋がりを描く。その結末はどうしようもないくらいに不合理だ。

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「人々のつながりを通じて不合理を描く」という点で、『スリー・ビルボード』は田舎版『クラッシュ』。けれど『クラッシュ』と決定的に違う点は、『クラッシュ』が「巡り合わせ」の不合理でストーリーが動いているのに対して、『スリー・ビルボード』は「感情」の不合理で動いているところ。ここがたまらなく好きなのである。
人の感情は様々なものが混ざりあっていて、白黒はつけられない。
相手に死期が迫っていることを知っていたとしても、娘の事件の捜査が進まなければ、痛烈な批判を浴びせる。けれど、目の前でその相手が血を吐けば、憎くても手を差し伸べる。
自分を2階から突き落とした相手でも、大火傷をして運び込まれれば、ストローをさしたオレンジジュースを分けてやる。
それぞれに迷いはあるけれど、迷いがありながら選択する行動だから意味がある。
そうした白黒のはっきりしない登場人物の行動は、観客を戸惑わせると思うのだけれど、それでもグイグイとついてこさせる力がこの映画にはある。
合理か不合理かは問題じゃない。大事なのは感情だとでも言いたげな感じ。
よくよく考えれば合理性とか論理なんてものは、人の感情を動かすための道具でしかないわけで、感情より合理性が重視されていることのほうがおかしいのである。

全体的に情報量が多い映画。
物語の開始がレイプ事件ではなく3枚の看板を建てるところなのは、アテンション・エコノミーのモチーフか。
建物の入口で火の手が上がっているにもかかわらず、イヤホンで耳を塞いでいて気づかないのは、目の前の危険に気づかない現代への批判か。 などなど。

気に入ったら何度も見たくなるはずの映画である。

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