エイリアニスト | 常人とサイコパスの垣根は——

あらすじ

19世紀のニューヨーク。階級の格差と警察の腐敗の進むこの街で、少年を標的にした連続殺人事件が発生する。精神病治療の研究に携わるクライズラー博士は、黎明期の精神医学を使って、連続殺人犯の正体の解明に挑む。

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エイリアニスト〈上〉―精神科医 (Hayakawa novels)

エイリアニスト〈上〉―精神科医 (Hayakawa novels)

感想

狂人を理解するには、狂人にならなければならない——。

そんなテーマで去年配信されたのがNetflixの『マインド・ハンター』。 1970年代を舞台に、主人公が凶悪犯のプロファイリング手法を編み出していくさまを描く。
主人公が無自覚なまま凶悪犯の思考に寄っていく様子はスリリングだったけれど、イマイチスピード感がなくて、物足りなかったというのが正直な感想です。

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そんな私と同じように『マインド・ハンター』のテーマは好きだけど、ミステリーやスピード感に不満という人には、この『エイリア二スト』がオススメ。
謎だらけの惨殺死体に、捜査を妨害する警察の腐敗、貧困層と富裕層の格差。
主人公たちにはどこか暗い過去があり、それが主人公たちも凶悪犯の側に落ちてしまうのではないかという緊迫感を与える。
1890年代のニューヨークは隅々まで時代考証が行き届いているようで、銅色の自由の女神であったり、作中にちらりと出てくる歯医者の吸引機になるほどと思う。後に大統領となるセオドア・ルーズベルトや、富豪のジョン・モルガンも実名で登場する。ゲームの『アサシン・クリード』にハマったことがある人なら、このおもしろさをわかってもらえるのではないだろうか。

「連続殺人犯を捕まえるには、彼を理解しなければならない」というところから始まり、「彼を理解できる私は、連続殺人犯の素質があるかもしれない」ということに気づく主人公たち。
各話の最初に必ず出てくる「19世紀、精神異常者は人間の本質を失ったもの(エイリアン)だと考えられていた」という説明が深い。
きっと、健常者と異常者を分ける壁なんて、思っているよりもたいそうなものではない。障子紙みたいに薄っぺらい紙一重なもので、ちょっとの出来事や障害で、容易に突き破って向こう側へと行けてしまう。
その危うさを心にとめて、彼らをエイリアンだなんて突き放したりせずに手を差し伸べる。
そうすることで、何かが変わる。
そんな希望を残してこのドラマは終わるのです。

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