ジョジョ・ラビット | 最後に残る価値観は愛

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あらすじ

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(C)2019 Twentieth Century Fox
第二次世界大戦下のドイツ。アドルフ・ヒトラーを空想上の友達とするほどナチズムに心酔する10才の少年ジョジョは、母親と暮らす家にユダヤ人少女が匿われていることに気づく。ナチズムの教えとの矛盾に戸惑いながらも、ジョジョはエルサに惹かれていく。

感想

現代にはびこるヘイトへの風刺コメディ。

舞台は第二次世界大戦終盤のドイツ。それにも関わらず開始早々に流れるビートルズの ”I Want To Hold Your Hand”。
時代を無視して20年も後の西側のヒット曲を流す意図は明確で、この映画で語られる差別やヘイトはナチスに限ったことではない。
ビートルズの名曲をバックに流れる白黒の映像。そこに写るドイツの人たちは、私たちがカリスマやアイドルに示すのと同じように熱狂をもってナチスを迎え、ヒトラーに賛辞を送る。
登場人物が臆面もなくドイツ語ではなく英語を話すのも同じ理由で、この映画のテーマはナチスの反ユダヤという限られたものではなくて、世界中のヘイトに対する風刺なのだ。

ユダヤ人は恐ろしいと教育されきたジョジョだったが、母親が匿っていたユダヤ人少女のエルサを見つけ、価値観が変わっていく。エルサには角や尻尾はない。そして何より恋に落ちるほど美しかった。
一方でドイツは連合国に追い込まれ、ヘイトの対象を変えていく。あれほど憎かったユダヤ人はどうでもよく、矛先は目前に迫ったソ連やアメリカへと。
都合によって変化するヘイトの対象。
ジョジョの空想上のヒトラーやコメディを交えて描かれるゲシュタポによって、ヘイトの馬鹿馬鹿しさが際立つ。

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© 2019 TWENTIETH CENTURY FOX

連合国が勝利をおさめ街を占拠したとき、そこに残っていたのは瓦礫の山。
あれほど幅を利かせていたゲシュタポもドイツ軍も、連合国に捕らえられ、街の価値観は変わっていた。
屋根裏に潜んでいたエルサが街に出ても、咎める者も通報する者もいない。
自由になった空の下で、ジョジョとエルサは踊る、踊る。
価値観が崩壊した街で、最後に残っていたのは愛だった。

ヘイトの対象は都合次第で変わりうり馬鹿馬鹿しい。けれど愛だけは不変で、だからこそ尊い。
そんな当たり前のことに「笑い」を交えて気づかせてくれる『ジョジョ・ラビット』は傑作だ。