パラサイト 半地下の家族 | 地上と地下は別世界

パラサイト 半地下の家族(吹替版)

韓国映画初のパルムドール受賞作。
階級格差をテーマにしたブラックコメディ。
ひょんなことから息子が大富豪の娘の家庭教師になったことをきっかけに、娘、父、母の四人家族が芋づる式に大富豪の家に入り込み、寄生を始めていくさまは単純におもしろい。
紹介制だの、メンバーシップだの、リッチでクールな響きのする言葉で手玉にとられる大富豪一家。これって昔から言う「コネ」というやつ。
コネで人を雇い、終いには家を支配されてしまう一家の姿は、腐敗していく組織の姿に重なる(韓国の財閥に限らず)。
一方で、どんなに細いコネでも利用しないと劣悪な生活から抜け出せない半地下一家の状況は、韓国社会の閉塞感を投影しているのだろう。

やっとのことで地上に出てきた半地下一家も、「切り干し大根」の臭いがするという理由で、富豪一家からは距離を置かれる。結局、底辺から這い上がったとしても、生まれた半地下の臭いは自分について回るのだ。その疎外感はそのまま階級の壁である。
高台に住む富豪は、大雨の浸水で半地下の住人が住居を追われても知ったことではない。それどころか、地下に死体があっても気づかない。
半地下住人が避難先の体育館で生活物資の取り合いをしている一方で、富豪は昨日の雨のおかげで今日は澄んだ青空だと言いながら、息子の誕生日パーティーを開催する。
その違和感の描き方が絶妙で、ありえない設定なのに納得感がある。

男女格差を書いた『82年生まれ、キム・ジヨン』が韓国で大ベストセラー。
Netflixの『秘密の森』が描くのは韓国警察の汚職。
そこへ来てこの『パラサイト』。
これほど格差にまつわる作品が立て続けにヒットすると、韓国の状況が心配になってくるけれど、程度の差こそあれ、どこの社会でも存在する問題なのだろう。
そんな社会問題をブラックユーモアと徹底した絵作りでエンタメに仕上げた本作はかなりおすすめ。