『5000日後の世界』レビュー

ビジョナリーと称されるケヴィン・ケリーのインタビューと寄稿集。
次の「5000日後」に対して彼が抱くビジョンと、彼が未来を言い当ててきた方法について。

ケヴィン・ケリーとは何者か

テック系雑誌のWIREDの創刊編集長で、1990年代に勝者総取りの法則、フリーミアム経済、収穫逓増の法則を提唱して、Googleなどの巨大IT企業の登場を予見した人物。
そういった未来を言い当てる能力もさることながら、本人がITビジネスに直接取り組んでひと山儲けた話はなくて、仙人のように沈思黙考して未来を言い当てる姿が人気の秘密ではなかろうか。 『<インターネット>の次に来るもの』という本を読んでなるほどと思ったのを覚えている。

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なぜ「5000日後」か

だいたい5000日(=約13年)でテクノロジーが成熟して、次の段階へと移ってきたよねというところから。
インターネットが広まり始めてから5000日後にSNSが登場し、今では社会のインフラに。さあ、次の5000日の主役となるテクノロジーは何か。

ケヴィン・ケリーの視点の持ち方

どうやって未来を言い当ててきたのかという問いに対してケヴィン・ケリーはこう答える。

テクノロジーに耳を傾け(listen to the technology)、それがまるで生き物であるかのように、「テクノロジーは何を望んでいるのか?」と問いかけることです。そしてテクノロジーが望んでいるものをどう助けようか、と注意を払うのです。 P18

このスタンスはケヴィン・ケリーのように客観的な立場にいないと難しい。実際に開発したり、ビジネスとして携わっている人間だと、テクノロジーを思い通りに動かして、強引にでも社会に溶け込ませないと仕事にならないのだから。

次の5000日後のテクノロジー

ミラーワールドとAR、そしてもちろんAIで5000日後の未来がやって来ると説く。
あとはクリーンミートと電気自動車とブロックチェーン。
人口は都市部に集中し、都市は都市ごとに専門化するという。シリコンバレーはIT、深圳はドローンといった具合に。
この本を読み込めば、SFの世界観のベースになりそうな、そんな1冊。