木造と鉄骨で断熱効果を比較してみる

前の記事で断熱等級が変わるとどれくらい室温が変化しそうか計算した。
その記事の中で木造の建物にどれだけ熱が溜まるかを計算していたが、ここを鉄骨用の数値に変えれば木造と鉄骨で比較できるはずなのでやってみる。

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木造と鉄骨の熱容量の違い

変わるのは建物の熱容量 C_{structure}である。
建物の質量を m_{structure}、その比熱容量を c_{structure}とすると、
 C_{structure} =  c_{structure}·  m_{structure}

木造と軽量鉄骨の建物の質量を調べると、2.3倍くらい異なるらしいのでこれを使う。
比熱容量は建物が全部鉄でできていると考えて鉄の比熱容量を使う。
そうすると建物の熱容量は以下のようになる。

木造 軽量鉄骨
建物の質量 kg 10,000 23,000
建物の比熱容量 J/kgK 1,600 444
建物の熱容量 J/K 16,000,000 10,212,000

軽量鉄骨になると質量は2倍以上に増えるが、熱しやすくて冷めやすい鉄の性質上、比熱容量は1/4になるので建物の熱容量は木造の6割くらいになる。

木造と鉄骨の温度変化の比較

上で求めた熱容量を使って前の記事と同様に、外気温0℃の真冬に室温20℃で暖房を切ったらどのように室温が下がるかを計算したグラフが以下である。UA値は断熱等級5の値を使っている。

木造と鉄骨の温度変化

木造では8時間後に14.5℃だったものが鉄骨では12.5℃くらいになり、2℃ほどの差が生まれている。鉄骨は木造よりも断熱で不利とよく言われる話と同じ結論だが、この計算結果からすると同じ断熱等級(UA値)だとしても蓄熱量が異なるので、木造と鉄骨では室温に違いがでてくることを示唆している。

免責事項とまとめ

前の記事と同じくすごく単純な系での計算であり、現実はこの計算通りにはいかないはずである。
まず空気流入を考慮していないので、鉄骨は温度による寸法変化が大きいために気密が取りにくいという話を無視している。さらに、鉄の熱伝達率の高さによるヒートブリッジ現象も無視している。よって、さらに木造と鉄骨の差は広がるはずである。
一方で、建物の熱容量計算では木のみでできた建物と鉄のみでできた建物を考えていることになるが、実際にはそんな純粋な建物はなく石膏やコンクリートといった様々な材料を使っているため、熱容量の差はここまで大きくはないと考えられる。

これらの考慮していない要素がどの程度効いてくるかはわからないが、木造よりも鉄骨が冷えやすいという通説はこの計算で確認できたと思う。

最後に、家づくりの参考になった本を載せておく。