住宅資金はどれくらいのスピードで積み立てればよいのか

住宅やローンについて調べていると、住宅資金が足りない場合は「資金が貯まるまで待ちましょう」というようなアドバイスをよく見かけるが、果たしてどれくらいのスピードで貯めていけばいいのかはあまり書いていないので考えてみる。

問題設定

「資金が貯まるまで待ちましょう」は20代であれば無条件に正しいと思う。
けれど35年ローンが当たり前のようになっている今、 30代になって35年ローンなんて組み始めたら、たとえ30歳でも払い終わるのは65歳。65歳を過ぎたらたいていの企業は雇用延長も終わる(数十年後には70歳まで伸びているかもしれないけど…)。そうなると、収入は年金だけになるわけで(これもアテになるか怪しいけど)、そんな状態でローンまで払い続けるのは心許なく、できれば65歳までに支払いを終えていたい。
となると30歳なら35年ローンを組めても、31歳なら34年、32歳なら33年と、支払い年数は縮んでいく。つまりは同じ額のローンを組んでいると、その分、毎月の支払額は増えていく。
住宅資金を貯めようと思ったところで、この支払額の増加の影響を打ち消せなければあまり嬉しくない。ではその影響を打ち消すためには年間いくらの住宅資金を積み立てていけばいいのだろうか。

具体的な状況設定

30歳のときに5000万円の住宅を35年ローンで購入しようと考えたとする。変動金利想定で金利0.5%としたとき、月々の支払いは13万円。これを高いと感じて毎年積み立てて住宅資金に当てようと決意する。
毎年100万円を積み立てて、住宅価格の1割にあたる500万円が貯まった5年後、この人は35歳になっている。65歳までに完済したいので30年のローンで残りの4500万円を借りると月々の支払額はどうなるか。計算すると13.5万円で、月々の返済額を減らしたかったのに、なんと積み立てる前よりも増えている。
同様に考えて、積立年数を横軸にして1年あたりの積立額ごとに月々の返済額をグラフにしたものが下のグラフである。
時間がこちらの味方をしてくれるのは毎年150万円くらいを積立られるようになってからであることがわかる。感覚よりもだいぶ厳しい結果ではないだろうか。

大雑把な理解

時間が味方をしてくれる住宅資金の積立スピードの分岐点について大雑把に考える。
積み立てに時間をかけることによって返済期間が短縮されることになる。35年を基準に考えるなら1年は約2.9%に相当するので、これを上回る積立をしていかなければならない。
5000万円の住宅ならばその2.9%は145万円であり、これを年間で積立てなければならない。
実際には年数が減ったことによって利子が付く期間が減り、積立によって借入額も減るからこの金額よりも少なく、10万円くらいの差が生じるが、そうはいっても大きな差ではない。さらには金利が高いほど時間を味方につけやすいが、金利が上がったら上がったでベースとなる支払額が増えるのでうれしくはない。
上は5000万円の住宅を例に出したけれど、例えば将来的に億ションを買いたいと思ったとしても、年間300万円くらいを積み立てられない限りは億ションは遠ざかっていくだけである。
時間は思ったよりも味方をしてくれない。

もちろん月々の支払い額を抑えるだけが住宅資金の積立の目的ではなく、自己資金が増えることによって有利な条件でローンを組めるようになるなど、その他の効果も出てくるだろう。
ただ、時間をかけて資金を積み立てることが必ずしも正解とは限らないと言うことは上の計算から言える。今後、人件費や材料費は上昇傾向だろうし。

最後に、上の計算とは関係ないが、ローンを考えるときに参考になった本を置いておく。