『アポロ18号の殺人』レビュー

宇宙に詳しい人ならご存知のとおり、アポロ18号は現実には存在していない。 正確に言うならば、アポロ計画では20号まで予定されていたけれど、NASAの予算削減などのあおりを受けて、18号以降は実行されることがなかった。
だからこの小説は架空の「アポロ18号」を舞台にした歴史改変小説である。

アポロ17号が打ち上げられたのが1972年のことだから、小説の舞台は冷戦の真っ只中。アメリカとソ連の思惑が、アポロ18号を舞台に絡み合い、とてもおもしろいサスペンスに仕上がっている。
実在した人物や宇宙開発計画が登場して臨場感に一役買う。自分のように米ソの宇宙開発計画に詳しくなく、その時代を知らなくても、下巻の巻末にある実話部分の説明を読めば、当時の状況がよくわかる。これはさすがに創作だろうと思っていたものが、実は実際にあったと知って驚いた。
そして何より著者のクリス・ハドフィールドが実際に宇宙飛行士だったというのが、細部の臨場感を支えている。しかもスペースシャトルとソユーズの両方に乗っているから、まさにこの小説を書くための経歴と感じ。宇宙ステーションでの実験の動画がYouTubeに上がっていたり、TEDで講演していたりするので、もともとこういうエンタメが好きな人なのでしょう。

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とても映画映えしそうな内容なので、どこかで映画かしてくれないかと期待。