『迷走するボーイング』感想 | 飛んではいけない飛行機

定期的に出版される企業不祥事シリーズ。

アメリカの似たような規模だとGEの話を読んだが、ブログには書いていなかった。

日本だと有名なのは東芝ですね。

『GE帝国盛衰史』も『東芝の悲劇』も社内の権力構造だったり会計のカラクリに力点が置かれているのに対して『迷走するボーイング』はコストダウンと株主還元によって、製品がどう腐っていったかが書かれていて、こちらのほうが身につまされる。
ボーイングは飛行機に限定されるから書きやすかったのもあるだろうけれど。GEや東芝の製品と言われても、多岐にわたりすぎて解説できない。

ボーイングといえば2018年と2019年に立て続けに発生した墜落事故に始まり、直近だと2024年の飛行中に非常扉が吹き飛んだ事故が記憶に新しい。これだけみるとボーイングの歯車は突然狂いだしたようにみえるが、この本を読むと20年、30年前からほころびが広がって、最近の破滅的な状態にいたったのだとわかる。
開発費も期間もかけられないので、現行機のマイナーチェンジでお茶を濁される新製品。 現行機の問題点は対症療法のみで根本的な解決はなされず、思いつきのように新たな機能が追加されることで新しい問題も抱え込んでいく。飛行機に限らず、どんどん増築されていく砂上の楼閣を、誰だって見たことがあるのではないか。
上の都合のいいように作成され、バッファもそれを達成する見込みもないスケジュール。どうせ誰も聞く耳を持たないというあきらめから作られたかもしれないオールグリーンの進捗報告資料を、僕らは見逃していたりしまいか。
自社株買いなどで株主に資金を還元している企業はいまどきいくらでもあるが、株主にお金を払う一方で、社内にコストダウンを命じる合理性をきちんと説明できている企業はいったいどれだけあるのだろう。

ボーイングのような巨大企業に勤めているわけではないけれど、これを対岸の火事だとは思えない。
選ばれし企業で起こった、どこにでもある不祥事の話。