HELLO WORLD | 物語のブロックチェーン?

HELLO WORLD

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  • 北村匠海
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脚本・野崎まどの2019年公開の映画。

2027年の京都に住む主人公が、10年後の2037年から来たという自分自身に出会い、3ヶ月後に訪れる交際相手の死を宣告され、それを回避するために奮闘するという、よくあるタイムトラベルもののストーリー。
ただし、この2027年の京都は歴史保存を目的に造られた「アルタラ」と呼ばれる装置内の仮想世界であるというのが普通のタイムトラベルものと違ってややこしいところ。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と『マトリックス』がいっぺんに来た感じ。ちなみに映画冒頭、鳥の羽が京都の上空を舞うシーンは『フォレスト・ガンプ』。

過去を変えようとするタイムトラベルに歴史の修正力が働くように、恋人を救おうとする主人公の行動にはアルタラの自己修復システムによる邪魔が入る。過去や未来との整合性をとるために。
ここで私は違和感に苛まれる。
アルタラは記録装置じゃないの……?
記録装置であるなら、単にデータを保存しているだけなら、ある一時点でのデータが変更されたところで、過去や未来のデータに影響がでることはない。各時点でのデータは独立しているのだから。
どうやら序盤にあったアルタラの説明を聞き間違えていたようで、こいつは「記録」装置ではなく「記憶」装置で、Wikipediaの記述をみると、過去の京都をシミュレートしているらしい。

歴史を保存するという目的の装置で、なぜ現実との誤差を避けられないシミュレーションという手法をとっているのか疑問。さすがにすべてのデータを保存する記録容量は確保できずに、何かしらのイベントだけを保存し合間はシミュレートして補完という方法をとったのだろうか。
どこかのデータが改竄されたとしても、過去と未来の連続性から判断して修正を入れるとか? なんだかブロックチェーンっぽい。因果やストーリーを理解できる高度なAIが必要だけど。
そんな修正機能を導入するためには、何が一番あり得そうな世界かを判断するために複数のシミュレーションを走らせる必要がありそうで、そうなるとやっぱり愚直にデータを集めて保存したほうが楽で確実で安上がりなのでは……?
待てよ、この複数のシミュレーションというのは、映画のエンディングからして正解……?

物語とは別として、頭の体操になる映画。