絶望を希望に変える経済学 | 断定しない科学者

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2019年のノーベル経済学賞受賞者の二人による経済学の総まとめ。
経済学者と一般市民の間には、認識の大きな相違があると感じている二人が、貧困を中心にさまざまな経済課題について語る。

経済学とは違うけれど、コロナの報道を見ていると、本当の専門家というのは断定しない。
未知の事柄は言わずもがな、どれだけデータが揃っていようとも自分の考えや解釈が間違っている可能性があるわけだから「可能性はある」というスタンスで上手に濁す。
結果、歯切れの悪い回答になるわけだけれど、科学への向き合い方としてはそれが正しい。
一方で、そんな言い方よりも、断定した耳ざわりのいい言葉に人は動かされるわけで。科学者の言葉よりもフェイクニュースの方が広まってしまうのはそういうことだろう。 フェイクニュースといっても、一面だけ捉えれば正しいこともあるわけで、それが社会をより混乱させる。

この本の主題の経済学についても同じで、例えばトランプ大統領が実施した移民を規制する政策。移民によって労働者が供給過多になり、もともといた国民の失業者が増えるというのが規制の理由の大枠だったはず。
確かにそんなこともあり得そうだけれど、もう一歩広く考えてみると、移民によって消費も増えるわけで、労働の供給だけでなく需要も増えるのではということに行き着く。
事実、移民が増えたことで失業者が増えた、経済が悪化したというデータはなく、むしろ経済は良くなったというデータの方が多いとのこと。 ここで、移民はいいことだ!と著者たちが言い切ってくれれば読者としてはスッキリするのだけれど、他の要因もあるからまだ言い切れないねと、彼らは科学者のスタンスを貫く。

その科学者としての正しい姿勢が、一般市民に溝を感じさせているのだろうなと思うけれど、もしもその正しい姿勢を一般市民が理解してくれるのなら、ここまで溝が生まれることもなかったのかもしれない。