タイタン | 消費と創造の関係性

あらすじ

「タイタン」と呼ばれるAIにより仕事から解放された人類は自由を謳歌していた。
しかし世界に散らばる12個のタイタンのうちの1つ、北海道にある「コイオス」が機能不全に陥ったことで、心理学を趣味としていた内匠成果のもとに、「カウンセリング」の依頼が舞い込む——。

タイタン

タイタン

  • 作者:野崎まど
  • 発売日: 2020/04/21
  • メディア: Kindle版

感想

前半部は人間の知性を超えた「タイタン」とどういうふうにコミュニケーションをとろうかと試行錯誤するパート。人間にとって理解不能な超知性とのコミュニケーションということで、『ソラリス』っぽさを感じる。

ソラリス (ハヤカワ文庫SF)

ソラリス (ハヤカワ文庫SF)

後半部は研究室に閉じこもっていた前半部とうって変わって、北海道からベーリング海峡を抜けアラスカへ渡り、シリコンバレーへと向かうロードムービー。
物語の転調の仕方とこじつけ方が大胆で、野崎まどらしい。
仕事を放り出して研究室を飛び出すことで、創造力を解き放つコイオスの姿はAIの未来であり、人類の現在。結局、AIにとっても人間にとっても仕事なんてルーティンワークで現状維持、未来に向かって可能性を広げる力にはならないだろう。今の私たちは先代が整備したインフラを維持するので精一杯。

一言でまとめてしまえば、「お仕事小説」なんだけど、それではあまりに個人的な話に寄りすぎている気がする。結局、個人個人が「やりがい」を持てるような仕事をしろということなんだけど、では「やりがい」はどこから湧いてくるのか。
それは他者からの適切なフィードバックであり、フィードバックとは何かといえば消費行動の末に生まれるもの。
一方でこれからの時代はAIによって物事は最適化されていく。最適化とはつまるところ、消費の減少を意味する。AIが処理し、生み出す圧倒的なアウトプットに対して、消費が釣り合わなくなっていく。フィードバックがなくなっていく。やりがいがなくなっていく。そして、進歩もなくなっていく。

これから迎えるであろうAIの時代に、今までの大量消費を前提にした社会モデルは通用するのかといった大風呂敷を広げた作品である。
風呂敷の広げ方が大胆で、強引で、合わない人もいるだろうけど。

タイタン

タイタン

  • 作者:野崎まど
  • 発売日: 2020/04/21
  • メディア: Kindle版

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  • 作者:野崎まど
  • 発売日: 2013/09/30
  • メディア: Kindle版