このパンデミック映画が公開されたのは2011年。
「パンデミックはどのように発生し、社会はどう変わっていくのか」
映画が描くパンデミックの発生は、2003年のSARSと、2009年の豚インフルエンザの繰り返し。幸いにもそのときは、局所的な流行にとどまり、こと先進国においてはパニックを起こすような被害はなかった。だから、2011年のこの映画で描かれるアメリカの姿は空想だった。
COVID-19が出現するまでは。
接触感染、物資の不足、病床確保のために体育館に並べられるベッドの列——。
2020年の今、連日ニュースで流れる光景が、2011年の映画でいくつも描かれている。
極めつけはジュード・ロウが演じる記者の存在で、レンギョウが感染症に効くというデマを流し、関連証券をつり上げ、金を儲ける。
今でこそ危機時の「フェイクニュース」に気をつけましょうは当たり前になっているけれど、2011年の段階で警鐘を鳴らしているのは先見の名。この頃は東日本大震災における速報性やアラブの春での有用性など、SNSのポジティブな側面にしかスポットライトがあたっていなかったと思うけれど、当時の雰囲気とは逆行する予言が、その後的中している。
この映画の焦点は「未知の感染症に人類はどう打ち勝つのか」ではなく、「未知の感染症は社会をどう変えてしまうのか」。
だからわかりやすいカタルシスはないけれど、9年後の現在を不気味なまでに言い当てている。
映画はパンデミックが一段落したところで終幕。現実の社会はこれからどう変化していくのだろうか。