1兆ドルコーチ | シリコンバレーの名コーチ

アメフトのコーチ出身でありながら、ジョブズやGoogleの創業者といった、シリコンバレーの名だたる経営者たちを指導した人物、ビル・キャンベル。
彼がどのように考え、行動し、どう組織に影響を与えていったのかを描き出すのがこの本の趣旨のよう。

語られるエピソードの数々は、ビル・キャンベルの器の大きさを示していて、なるほど、こういう人物が組織にいれば嬉しいだろうなとは思う。
ただ、そういったエピソードから「こういうときはこうしましょう」と引っ張り出してきて、「成功の教え」とするのはイマイチ納得がいかない。

その「成功の教え」はビルが行うからこそうまくいくのであって、そこだけ抜き出してきてマネするだけでは非常に危険。
表面をなぞっただけの「成功の教え」はすぐに見透かされて、組織を崩壊に導きかねない。

何かの研修にいった途端、それまでの彼ら彼女らのパーソナリティに似合わない行動をとる友人や同僚や上司を見たことは誰だってあると思う。そんな違和感がこの本にはある。

亡くなったビル・キャンベルを追悼するために、それこそ『スティーブ・ジョブズ』のように徹頭徹尾、伝記に徹していれば、こんな違和感は生まなかっただろうに、彼をノウハウ化しようとしたところに無理がある。
ある意味、GoogleのCEOだったエリック・シュミットの著書らしいといえば、らしいが…。