天気の子 | 『君の名は。』と鏡合わせの物語

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感想 ※ネタバレあり

異常な雨が降り続く東京。
新海誠の新作は、晴れ間のない今年の夏を予期していたかのような舞台設定で繰り広げられるボーイミーツガールの物語。

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出典:映画『天気の子』公式サイトより

『君の名は。』とは正反対のテーマ

どうしても大ヒットを飛ばした『君の名は。』と比較したくなるわけだけれど、『天気の子』と『君の名は。』は鏡合わせの関係にあるのだと思う。

君の名は。

君の名は。

『君の名は。』の少女は世界に対して影響力がない。誰かが犠牲になろうとなるまいと変わらない世界が描かれる。少女が犠牲になろうがなるまいが、彗星の落下は避けられず、田舎町という少女の世界が消失することに変わりはない。少年としてはガムシャラに少女を救うことを考えればいい。

一方で、『天気の子』の少女は世界を変える力を持ち、誰かの犠牲の上に成り立つ世界が描かれる。彼女が犠牲になることで世界が救われるわけで、彼女に惹かれ、彼女を救おうとする少年はトロッコ問題の葛藤の中に置かれることになる。

トロッコ問題は個人的には好きなテーマだけれど、エンタメとして考えたら前者の方が圧倒的に有利で、後者は『エヴァンゲリオン』から連綿と続く、セカイ系のど真ん中。
クセが強く、万人受けは期待できないと思う。

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

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『君の名は。』との共通点

鏡合わせというからには、2つの作品の間には共通点がある。

まずは物語の構造と演出。
冒頭のアバンを皮切りに、開始30分ほどでRADWIMPSの歌声が流れ、それに被せるように登場人物による状況説明のナレーションが入るのは『君の名は。』の既視感がある。その後の展開の仕方もどこかで観たような感じがするし、二番煎じと言われても仕方ない気が…。

『君の名は。』の登場人物を出したのも悪手のような…。
『君の名は。』のユキちゃん先生のように、見切れるくらいでちらりと出てくるのであればいいけれど、今回みたいに瀧や三葉をあんなにハッキリ登場させちゃうと、観客の意識は物語から離れてしまうよ…。

悪いところばかり言ってしまったけれど、音楽は『君の名は。』と変わらず良かったところ。上の違和感を吹く飛ばしてしまうくらいに、盛り上げてくれる。

天気の子

天気の子

最後に

『君の名は。』という大ヒットを飛ばして、エンタメの方向に舵を切るのではと思われた新海誠。
けれど、この『天気の子』を観ると以前の新海誠に戻ったのではと思う。もしくは『君の名は。』がエンタメになったのは奇跡だったのか。

『天気の子』の最後で、世界より少女を選んだ少年に、大人たちは「どのみち世界は狂っているんだから、好きに生きろ」と声をかける。
上映前にはちょうど、『アナと雪の女王』の続編の予告が流れていた。
どちらにも込められる「ありのままに生きろ」というメッセージ。
けれど、個人的には「ありのままに生きれば世界も救われる」と説く楽天的なディズニーよりも、「世界が壊れようが好きに生きろ」とシニカルに説く新海誠のほうが好きではある。

小説 天気の子 (角川文庫)

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