あらすじ
ある日、学校の屋上から飛び降りた川崎朱音。
彼女の死が、進学校の日常を揺さぶる
自殺の原因は? 遺書はあったのか?
ネットに流れる自殺の瞬間を撮ったのは誰?
彼女の死が歪んだ青春を照らし出す。
- 作者: 武田綾乃
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2018/11/22
- メディア: 単行本
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感想
作者は『響け!ユーフォニアム』の武田綾乃。
高校のカヌー部を舞台にした新シリーズの『君と漕ぐ』も開始して、青春ど真ん中の王道が作風なのかと思いきや、今回は女子高生の自殺というかなりセンシティブでダークな内容になっている。
- 作者: 武田綾乃
- 出版社/メーカー: 新潮社
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※以下ネタバレあり
構成としては群像劇で、タイトルにいる川崎朱音を含めた7つの登場人物の視点で、彼女の死の真相が描かれる。
タイトルに名前が含まれた人物の「不在」を中心とした群像劇は『桐島、部活やめるってよ』に似ているけれど、
屋上に上がっても自殺しなかった桐島と違い、川崎朱音は冒頭から確実に死んでいて、かなりダーク。
ダークな群像劇という点では、『告白』に似たものがある。
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- 作者: 朝井リョウ
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- 作者: 湊かなえ
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自殺をし、同情を集める朱音が単なる悲劇のヒロインではないというのがこの物語のミソで、
どの登場人物の視点にも登場し、暗躍している感じさえある夏川莉苑の行動原理こそが、この物語のテーマではないだろうか。
莉苑の行動原理は祖母の言葉に集約される。
「世界はね、生きている人のためにあるべきなの。死んだ人間のために今生きている人間が犠牲になることは絶対にいけないことよ。だから誰かの死のせいで生きてる人が不当に傷付けられないよう、人間には真実を曲げる権利がある」 p201
ロボットのように正確で、冷淡で、無慈悲な莉苑には賛否両論あるだろうけれど、その行動は一貫している。
人が傷つくくらいなら、真実を曲げてしまえ。
曲げられた真実が心地の良いものならば、人はそれを信じるのだ。
自殺をした同情すべき人物が、実は問題の根源だったというどんでん返しは『何者』のラストに似た背筋の寒さがあり、
物語ラストの「くひっ!」という台詞には、映画『告白』の「どっか〜ん!」ばりの薄気味の悪さがある。
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これは傑作だと思う。
「だから何?」と言われてしまえばそれまでだけど。
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