暗幕のゲルニカ | 暗幕に覆われた悲惨さ

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あらすじ

国連本部。「テロとの戦い」と称して、イラク攻撃を宣言する米国務長官。
普段、「ゲルニカ」のタペストリーが飾られているはずのその背後には、それを隠すように暗幕がかけられていた。
世紀の画家、ピカソはその衝撃作にどんなメッセージを託したのか。
ピカソが生きた過去と、キュレーターの遙子が生きる現代が交錯するアートサスペンス。

暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

感想

アメリカがイラクへの空爆を宣言した現代と、
ナチスによる故国スペインのゲルニカへの空爆に激怒したピカソの過去。 その対比と交錯がこの小説のミソだけれど、
司馬遼太郎やダン・ブラウンを想像して読み始めると肩透かしを食らう。
主だった絵画はゲルニカだけだし、
主要な登場人物もピカソとその愛人であるドラ・マールだけだから。その他のキーパーソンは全て架空の人物。
登場人物たちは台本通りに動いてくれているようで、物語がサクサク進んでいく。

今作ではゲルニカという戦争の悲惨さの象徴を覆い隠すことに、人の意思があったわけだけれど、現実ではそんなことをせずとも時間というベールが戦争の悲惨さをゆっくりと隠していく。
世界大戦から70年以上が過ぎ、当時を知る世代は次々と旅立っていく。
あの時を語ってくれるのはゲルニカような芸術作品や、当時の記録映像や写真だけ。
私たちはそこに込められた思いを、色褪せることなく次の時代へ伝えていくことができのだろうか。

暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

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