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リズと青い鳥 | 私は彼女が羽ばたくための呪詛を吐く

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あらすじ

『響け!ユーフォニアム』の北宇治高校吹奏楽部、第二楽章。
3年生になったオーボエ担当の鎧塚みぞれと傘木希美が最後に出るコンクールの自由曲は「リズと青い鳥」。童話をもとに作られた作られたこの曲には、オーボエとフルートが掛け合うソロがあった。
童話の物語に自らを重ねる二人だが、どこか噛み合わない。
噛み合う一瞬を求めて、二人はコンクールまでの日々を過ごす。

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※以下、ネタバレあり

感想

『響け!ユーフォニアム』は好きで、1期2期と楽しく見ていたんですが、この『リズと青い鳥』はナンバリングタイトルになってなかったので気づいてなかった。
外伝的な扱いなのは、あらすじにもある通り、みぞれと希美の二人が主人公で、テレビで主役だった久美子や麗奈の出番がほぼないから。久美子にいたっては、ガヤていどのセリフしかなかったんじゃないか。

スピンオフとはいえ、このシリーズ独特のメッセージ性がなくなることはない。

みぞれと希美は自分たちの関係を「リズと青い鳥」の童話に重ねる。
ひとりぼっちのみぞれの元へやって来た青い鳥が希美。青い鳥を羽ばたかせるため別れを告げた童話の中の少女のように、みぞれも希美を鳥かごから解き放たなければならないと。
けれどその重ね合わせは間違いで、オーボエの才能を持つみぞれの足かせになっていたのはむしろ、希美のほう。希美がみぞれを解き放たなければならない。

そのことに気づいた希美はみぞれに、違う進路を歩む決意を告げる。 希美と離れたくないみぞれは、
「私は希美の全部が好き」
と言って、希美を引き留めにかかる。
それに対する希美の返答は、 「私はみぞれのオーボエが好き」

これほど多重的で、残酷で、前向きなセリフがあるだろうか。
「私はみぞれのオーボエが好き」
セリフだけ抜き出せば、ポジティブだ。 けれど文脈を加味したとき、これほど残酷な言葉ない。
みぞれは希美の全てを受け入れていると宣言しているのに対して、希美はみぞれのオーボエの才能しか認めていないのだから。
けれど意識してか、たまたまか、 希美がみぞれを解放するためにかける言葉としてはこれが正解だった。
ここで「私もみぞれの全部が好き」と言ってしまったら、みぞれはオーボエの才能を投げうって、音大への道を捨てさって、自分と同じ一般の大学への道をついてきてしまうから。
「私はみぞれのオーボエが好き」
この言葉でみぞれの進路が決まる。
残酷だけれど、前向きで、みぞれを音大に繋ぎ止める呪咀であり、みぞれを希美という鳥かごから羽ばたかせるための解放の言葉なのである。

テレビシリーズのような盛り上がりには欠けるけれど、「リズと青い鳥」のミスリード、主人公2人の関係から来るメッセージ性など、見どころのある作品でした。

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