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物語の中には、まったく新しい世界が広がっている

未必のマクベス | 台本通りに進む人生なんて

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あらすじ

IT企業に勤める中井優一は、東南アジアを中心に交通系ICカードの販売に携わっていた。あるとき優一はマカオの娼婦から「あなたは、王として旅を続けなくてはならない」と予言めいた言葉を告げられる。やがて香港の子会社の代表取締役として出向を命じられた優一は、企業犯罪に巻き込まれていく——。

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

感想

「未必のマクベス」というタイトルの意味、解説の文章がわかりやすい。

ミステリーの読者なら「未必の故意」という法律用語を思い出すだろう。ようするに、そうなることを期待していたわけではないが、そうなってもかまわない、というやつだ。つまり「未必のマクベス」とは、「マクベスになりたいわけではないが、なってもかまわない」ということだろう。 p610

この解説のとおり、物語はシェイクスピアのマクベスに沿って進む。つまりこの小説、タイトルで思い切りネタバレをしているのである。

マクベス (岩波文庫)

マクベス (岩波文庫)

とはいえ、マクベスを最初から最後まで読んだことのある人は中々いないと思うから、多くの読者にとってネタバレにはならないのだろう。そう思っていたら、物語の序盤の方で、丁寧に「マクベス」の顛末が説明される。
物語のネタバレを物語の中でするなんて大丈夫なのかと心配をよそに、登場人物が強気な発言をする。

「結末は秘密にしてください、なんていう話は、つまらないに決まっている(中略)世界中で上演され続けているシェイクスピアは、たいていの観客が結末を知っている。結末を明かせない話なんていうのは『二回観ても、つまらない話ですよ』って喧伝しているのと同じだ」 p9

まるで「この物語はおもしろい作品なのだから、結末を教えたところでその魅力は失われませんよ」と言いたげだ。

そして、実際はどうかというと、悔しいかな、おもしろいのである。
文体がきれいで、セリフも皮肉が効いている。久しぶりにページをめくる手が止まらなかった。

舞台は中国で、度々中国語が登場する。IT企業の犯罪小説であり、恋愛小説である。アイデア全乗せと言った感じの内容で、一味違った読後感。 他の本も読んでみようかなと「早瀬耕」という著者名を調べてみたら、22年前の処女作から一冊も本を出していないという。本の内容も変わって入れば、著者の経歴も変わっている。次の作品を読めるのは20年後か?

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)

未必のマクベス (ハヤカワ文庫JA)