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新・所得倍増論 | 「技術力」という魔法から目を覚まそう

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1年ほど前に読み終えた本だけれど、この本の内容について、最近思うことがあるので。「働き方改革」とか「生産性の向上」という言葉がちまたにあふれ始めたのは、この本が出てからではなかろうか。

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論

失われた20年で、世界2位の経済大国から3位へと後退した日本。
中国が日本を追い越して、世界2位となったとき、多くの日本人の頭の中には、次の言い訳が浮かんだはず。
「中国は日本の10倍の人口を持っているから追い越されても仕方がない」と。
それはこの小さな島国で、「たった」1億人の人口で、世界第2位の経済大国にまで登りつめた日本の誇りからくるものだっただろう。
我々は質より量を取る中国とは違う。世界に誇る技術力がある。この不況は一過性のもので、いずれまた中国に負けない位置まで浮上できる、と。

けれどそれは誇りではなく、おごりだったと気づかせるのがこの本である。
そもそも中国の10分の1とはいえ、日本の人口の1億人というのは世界第2位の人数で、決して少ない人数ではない。
先進国で1億人を超えているのはアメリカだけ。ヨーロッパで、いちばん人口が多いのはドイツだけれど、それでも日本の3/4以下の人口である。
人口が多いほうがこなせる仕事量が多いのは当然だから、人口が多く、ある程度の教育が行き届いた日本が世界第2位の経済大国になるのは、「技術力」うんぬん関係なく、当然の結果。中国躍進の理由である人口マジックは日本にも働いていたのである。
それなのに日本には「技術力」という神風があるなんて勘違いして、先を見通さずに突っ走ったものだから、いつの間にやら日本の生産性(1人当たりのGDP)は世界27位。そして、少子化で人口も減っているわけで、将来の見通しは本当に暗い。
今、何かの対策を打ったとしても、その効果が出てくるのは、10年、20年先の話になる。もっと早くに対策を打てなかったのか。

とはいえどれだけ嘆いても過去は変えられないわけで、「現在」から軌道を修正していかなければならない。
前進するには、まず己の問題を知ることから。 「技術力がある」とか「日本人は素晴らしい」なんて、称賛の言葉に浸かり続けた私たちには、痛みを伴う内容かもしれないけれど、目を背けてはいけない。
技術力なんてまやかしで、生産性は先進国中ぶっちぎりの最下位で、人口も減っていくばかり。これが今の日本なのである。

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論