ブレードランナー2049|オリジナル以上にリアル

『スター・ウォーズ』『ターミネーター』『猿の惑星』etc.
毎年のように過去の作品のリメイクなりリブートなりが生産されてはいるけれど、オリジナルを超えるようなものはなかなかない。
それはこの『ブレードランナー 2049』でも同じだろうと思っていた。ましてやカルト的人気を誇る『ブレードランナー』のリブートなのだ。カルト的といえばカッコいいけれど、要するに何でここまで人気が出たかわからない、危ういバランスの上に成り立っている作品なわけで、そんなものを真似したところでオリジナルにはほど遠いものになると思っていた。
けれどこの『ブレードランナー 2049』はオリジナル以上のオリジナリティをもって、『ブレードランナー』を超えてきた。これは『ブレードランナー』の続編ではなく、『ブレードランナー2049』なのである。

ブレードランナー 2049(初回生産限定) [Blu-ray]

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ブレードランナー ファイナル・カット [Blu-ray]

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(以下、ネタバレにつながる箇所があります)

原作である『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』から、『ブレードランナー』のメインテーマには「リアルとは何か?」が掲げられている。その“リアル”は、マーサー教の出てくる原作では“信仰”とイコールであったり、『ブレードランナー』では“人間”であったりと多少の変化はあるのだけれど、基本は変わらない。 そして今作の“リアル”とは“人間”を意味するのと同時に、文字通りの“現実”も指しているのである。

そのテーマが強烈に示されるのが序盤のシーン。ホログラフのAIでゴズリング演じるKの恋人の役割を果たすジョイは初めて外に出る(余談だけれど、ジョイかわいい)。2049年の夜のロサンゼルスには雨が降っている。初め、ホログラフであるジョイの身体は当然のごとく雨が通り抜けるため、ジョイの身体は濡れない。時間が立つと、何らかの演算処理が働いて、ジョイの身体に雨粒が当たったようなホログラフが追加されていく。仮想のジョイの身体に現実の雨粒が重なっていくことで、仮想と現実の境目がなくなっていく。

「現実とは何か?」という問いは転じて「夢とは何か?」という問いでもある。 最終盤でKの夢は叶わないものだとわかる。絶望する彼はそれでも、少しでも自分の夢に近づこうと命をかけてあがく。自分と同じ夢を見る“兄弟”へとデッカードを託し、彼は倒れる。 彼の夢は叶うことがなかったけれど、別の人物に夢を託すことはできた。夢に踊らされ、叶えることができなかった彼の末路はバッドエンドなのか。それとも、誰かの夢を叶えることができたぶん、ハッピーエンドなのだろうか。

圧倒的な映像美と音。 前作からの謎を回収しつつ、観客が議論できるような余白は残す。 この映画が名作であることに間違いはない。

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