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火星に住むつもりかい? | 正義と平和は危ない言葉

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あらすじ

「平和警察」によって取り締まれられる仙台。平和警察の管理下では、住人の監視と密告によって「危険人物」と見なされた者は、衆人環視の中で処刑される。そんな不条理渦巻く世界で窮地に陥った人々を救うのは「正義の味方」、ただ一人。平和警察と正義の味方の対決が始まる。

火星に住むつもりかい? (光文社文庫)

火星に住むつもりかい? (光文社文庫)

感想

『魔王』だったり、『モダンタイムス』だったり、『ゴールデンスランバー』だったり。伊坂作品には、強大な権力と、それに振り回されるor立ち向かう人間というような構図のものがときおり登場するけれど、この『火星に住むつもりかい?』もその系譜。

この作品は一つの方向に束ねられていく社会に警鐘を鳴らす。

「社会の人の考え方も、一つに揃えないほうが自然な状態だと、私は思うんですよ。全体の力は弱くなりますが、安定します」 「つまり、平和警察が、国民を押さえつけてしまうのは、力は強くなるかもしれないけれど、不自然、安定してないんじゃないか、と先生はそう思うわけだ」 p244

「正義の味方」が現れ、「平和警察」に勝利したとしても、それはベストではないと指摘する。

「何がどう変わろうと、別に、世の中が正しい状態になるわけじゃないけどね(中略)振り子が行ったり来たりするように、いつだって前の時代の反動が起きて、あっちへ行ったり、こっちへ来たりを繰り返すだけだよ(中略)大事なのは、行ったり来たりのバランスだよ。偏ってきたら、別方向に戻さなくてはいけない。正しさなんてものは、どこにもない」 p490

能天気な楽観主義に終始するわけではなく、かといって物語が暗く沈んだネガティブ思考に陥るわけでもなく。
人や社会の陰の部分を認めながらも、ユーモアや軽快なセリフ回しで、陽気に話を進めて行こうとする感じはいつも通り。

とはいえ、いつもよりぎこちない感じはする。モチーフを詰め込んだはいいけれど、エンタメとしては煮詰まらなかった感じ。
やっぱりこの系譜だと、『ゴールデンスランバー』がいちばんかなと。

火星に住むつもりかい? (光文社文庫)

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