生きている会社、死んでいる会社 | これからの精神論

感想

精神論は好きじゃない。
楽して稼いだほうが偉いのは当たり前のことだと思う。 だから、効率性に焦点を当てた企業の利益率重視の動きや働き方改革が広まっていくのは、個人的にはありがたい。

けれど利益を重視することで、働き方を見直すことで、ぼくらは前に踏み出せるのかと自問してみると、たぶんそうじゃないんだろうなという答えが返ってくる。

精神論を捨て、売上至上主義を捨て、効率至上主義になった結果どうなったのか。
裁のいい八方美人の数字と事実を作ることに注力しているだけのような気がする。豪華な化粧箱だけ作って、そこに入れるものは二の次になっている感じ。
その状況が臨界点を突破して、帳簿に手を出したの東芝の粉飾(まがいの)決算、品質に手を出した神戸製鋼などの品質偽造、ハンコに手を出した自動車メーカーの検査結果の偽造が生まれたのだと思うのです。

仏作って魂入れずというか、もともと魂はあったのだけれど、いつの間にか抜けてしまったようで。
どうやら日本は精神論を捨てようとしている間に、精神まで捨ててしまっているみたいです。

生きている会社、死んでいる会社―ー「創造的新陳代謝」を生み出す10の基本原則

生きている会社、死んでいる会社―ー「創造的新陳代謝」を生み出す10の基本原則

その流れに警鐘を鳴らすのがこの本。
いくら利益率を重視しようと、最新の管理システムを導入しようと、「熱」のある人間が集まらなければ会社としては死んでいる。 熱を持った人材を揃え、育てるべき分野、捨てるべき業務をきちんと把握して実行するのが生きている会社。
体温があり、新陳代謝を繰り返す。まるで生物のように活動している会社が理想の会社なのだ説く。
それを体現しているのが、GoogleやAmazonといったシリコンバレーの大企業。特にAmazonのジェフ・ベゾスなんかは、創業初日の情熱と身軽さを失わないようにと、「デーワン」を唱えている。
この「デーワン」の精神こそが、いまの日本に足りないものなのではないですかと。

ここに明確な数字や証拠が挙げられているわけではない。
そういう意味ではこれまでの精神論と変わらないのだけれど、私はこれが正しいのだと感じる。
「数字」や「論理」を軽視して、「精神」だけで進んできたこれまでの日本。
一方で、「精神」を無視して、「数字」や「論理」だけで進もうとする今の日本。
「人間は極に振れるものだ」とはよくいうけれど、それにしたって振れすぎやしませんか。
それだったらこの本が説いている、はじめに「精神」があり、その「精神」を外部に伝えるために「数字」や「論理」を使う、そういう会社が成功する、ということを信じてみたいと思うのです。

これはこれからの精神論の話です。

生きている会社、死んでいる会社―ー「創造的新陳代謝」を生み出す10の基本原則

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