シェイプ・オブ・ウォーター | 魚人に恋ができますか?

あらすじ

冷戦の時代。アメリカ政府の極秘研究所に清掃員として勤めるイライザは、極秘実験の一部を垣間見る。それをきっかけに彼女の生活は一変する。人間ではない不思議な生物との言葉を超えた愛。それを支える優しい隣人たちの助けを借りて、イライザと”彼”の愛はどこへ向かうのか。 「パシフィック・リム」のギレルモ・デル・トロが愛を描く。

感想


2018.3.5 追記: アカデミー賞作品賞をとりましたね。
「魚人との恋」なんていう人類にはまだ早すぎると思っていたので、
正直とるとは思っていませんでした。
とるとしたら、まだ人類にとってわかりやすい「スリー・ビルボード」のほうかなと。
デル・トロのオタク魂のおかげで人類は一歩前に進めたのだと思います。

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正直に言って番人受けするタイプの映画ではない。
映画のR指定が注意しているとおり、エロあり、グロありと癖のある映画。
とはいえ、悪いというわけではなくて、感じるところはきちんとある。

声を出せない主人公。ゲイで絵描きの隣人。アメリカに潜むソ連のスパイ。そして、研究対象の魚人。
この映画の主要人物は人とは違い、社会にうまく溶け込めない人たちだ。

そんな人々を主軸に据える映画のテーマを一言で表せば「多様性」。
最近でいえば、このあいだ観た「グレイテスト・ショーマン」とか、「ドリーム」もその系譜。

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けれど、それらの映画で描かれる「多様性」は通常、「とにかく違いを受け入れましょう」という程度のものが多くて、「自分と違う人」を見たときの人間の正直な反応を観客に想起させるようなものは少ない。
この映画における「違う人」の代表格はもちろん魚人。魚人の初登場シーンで観客は驚き、恐れ、嫌悪感さえ抱くはず(デル・トロのような怪獣マニアは除く)。
「違い」についてそういった感情を反射的に抱いてしまうのは、本能みたいなものだから、どうしようもない。では、そんな脊髄反射を乗り越えて、私たちは「自分とは違う人」にどう接すればいいのだろうか。

違いを嘲笑うのか。
とにかく違いを受け入れましょうと、ネガティブな感情を覆い隠して、偽りの友好を結ぶのか。
それとも——。

魚人と恋に落ちるイライザの一言が答えである。 声を出せないのは私も彼も同じ。だから彼も私と同じ人間だ、と。

つまり、違いよりも共通点に目を向けましょう、と。

魚人が大好きな人は何も考えずに観るといい。
魚人が気持ち悪いと思う人もぜひ映画館へ。得るものはきっとある。